レビュー
吉井和哉 | 2011.02.16
繰り返され続いていく、そんな摂理の先を垣間見せるかのような楽曲だ。歌われていないが、そこには「戦争」や「紛争」「内紛」といった大きな争いから、「諍い(いさかい)」や「対立」といった身近な争いまで、身の回りの到るところに転がっている「無数の争い」からの脱却と、それらよりもはるか尊い、「愛」や「平和」への願(がん)や信奉が楽曲の根底に流れている。
吉井和哉の約2年振りのニューシングル「LOVE&PEACE」のタイトル曲の話だ。
争いを対峙にもたらせ、人は誰しも愛について探求していくさまをつきつめていきながらも、キチンと最後には、それを昇華して表わしている感のある同曲。「LOVE&PEACE=愛と平和」という、1960年代後半から唱え古され、使い古された社会運動や共同幻想時代の常套句を用いながら、原初的であり、永遠に残るであろうこの言葉をあえて使うことにより、絶えず終わらないことは分りながらも、その「争い」の不毛さを説いた懐の深いナンバーだ。
海外ミュージシャンの演奏によるレコーディングを行った近作とは異なり、今夏より拠点を日本に移し、ほぼ本人の演奏により作られたという今回のシングル。ハートのドクロのキーワードや、ラストにようやく出てくる「LOVE&PEACE」のワードの重みもたまらない。あえて、どっしりとしたテンポと美しい旋律、展開以外は、吉井の歌唱も、あえてというぐらいすごくたんたんとした平熱感を保ち、歌われていたりする同曲。そしてその歌唱だからこそ、それがより信憑性や重みを持ち、耐えない争いよりも、やはり愛の方が重いことが聴き手の中で、問われ、説かれている。
M-2には背徳感たっぷりなサバトを思わせる「リバティーン」を収録。ジャングルビート&ロカビリービートの上、スリリングでリバーブの効いたグレッチ感たっぷりのギターサウンドと、ドロドロさと艶めかしさを同居させた歌唱と歌内容は、往年のイエモン・ファンを驚喜させることだろう。そして、ファズギター感たっぷりなピアノの効いたM-3には「星のブルース」を収録。ロマンティックでいて、刹那観やどこか、どことなくのポツンとした感じがたまらないナンバーだ。
話はタイトル曲に戻る。3月30日にリリースされる予定の約2年振りとなるニューアルバムの中でも、この「LOVE&PEACE」は、かならずや重要な「唄」となるであろうことを、ここに付記しておきたい。
【 文:池田スカオ和宏 】