レビュー
ONE OK ROCK | 2011.02.17
「アンサイズニア」。この、聞いたことのない英単語のような不思議なタイトルが、ONE OK ROCKのニューシングルだ。その語源は、「Answer is near」。なるほど、そういうことね!と思わせる彼ららしいネーミング。直訳すれば、答えは近くにある。つまり、答えを探そうと悩み巡り巡っても、最終的に戻るのは複雑な考えではなく極めて単純でシンプルな思考である、ということらしい。
昨年11月に初の武道館公演を大成功させたこともあり、ついにそういう境地に至ったのか、というのが音源を手にしたときのインプレッションだった(決して「聴いたとき」ではない)。デビュー前の小さなライブハウスのステージで見せた幼さも同居した感情の爆発や、初めてZeppという大きなステージを経験したときのパフォーマンスへの葛藤。僕の中にいるONE OK ROCKというバンド、特にフロントマンであるTAKAというボーカリストは、満足なんて言葉は知らなくて、いつだって「まだまだ」ってもがき苦しんでるやつだったから。そんなTAKAが今回の曲に投影したメッセージからは、どこか肩の力が抜けた"今"を感じることができたし、だからこそバンドが次の高みに達したようにも思えた。
もちろん、その楽曲やサウンドには一切の油断やゆるみなんかなくて、リズム隊を中心にした彼ららしいラウドでヘヴィなサウンドを押し出し、同時に印象的なコーラスワークによる儚さや繊細さも潜ませている。
「次の高みに達した」なんて、そんな印象をONE OK ROCKは素直に認めないだろうし、これからももがきながら自分たちを鼓舞していくはず。彼らの音楽にも答えなんて存在してないことに気づいていたって、それでもなお。だから本当は、世の中の面倒くさいあらゆることの答えも、風の中で吹かれているのかもしれないし、すぐ近くにあるってことなのかもしれない。こっちも、肩の力が抜けた。
【 文:小野瀬正人(memory motel)】