レビュー
WEAVER | 2011.02.17
昨年12月の「キミノトモダチ」に続く、WEAVERのダウンロードシングル「『あ』『い』をあつめて」。『愛』じゃなくて、『あ』『い』と表記されていることにもちろん大きな意味があって、彼らの伝えたいメッセージが明確に刻まれているのだ。
こんなふうに表記されれば、誰もが50音のスタートである『あ』『い』という文字と、その二文字によってつくられる『愛』という言葉を結びつけていることには気づくと思う。でも、それは決して単なる言葉あそびなんかじゃない。想いを伝えるために僕らがつむいでいるありとあらゆる言葉は、たった50の音からすべて作られている。その50の音の始まりが奇しくも『あ』『い』であることの意味を感じ、だからこそしっかりと大切に想いを言葉にしていこうというメッセージだ。
ふたりが愛し合っていれば言葉なんかなくたって気持ちは伝わる。そんなラブソングもたくさんある。そして、それも正しい。だけど、ここまではっきりと「言葉で君に届けよう」と言い切られることの新鮮さには、むしろそれ以上の正義すら感じさせられてしまった。きっとこの曲の主人公は全然器用なタイプじゃないんだけど、それでも想いを言葉にすることを選んでいる。それはまるで、日本語で歌を届けるWEAVERというバンドの覚悟とも重なっているように思えた。
そんなメッセージをのせたメロディやアレンジもまた美しく、春らしく優しいピアノのイントロから曲の最後まで、必要以上の装飾を排したとてもシンプルなアレンジになっているのだ。だからこそ、ピアノ、ベース、ドラムの3ピースバンドであることのアイデンティティをひとつも損なっていないのが素晴らしい。そして、サビに向かってかけあがっていくメロディとアレンジはさらなる曲の展開を予感させるのに、その先に待っていたのは決して勢いだけでもっていくことのない突き抜けたサビ。いい意味で期待を裏切るようなあえてゆったりとした符割りのメロディだからこそ、大切な言葉をしっかりと聴く者に届けてくれる。
当たり前のことなのに、当たり前すぎて気づくことのなかった大切なこと。そんな何かを、この曲が気づかせてくれたような気がする。
【 文:小野瀬正人(memory motel)】
リリース情報
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『あ』『い』をあつめて(配信限定/着うたフル(R))
発売日: 2011年02月09日
価格: ¥ 400(本体)+税
レーベル: A-Sketch
収録曲
『あ』『い』をあつめて