レビュー
今井美樹 | 2011.02.17
歌手デビュー25周年イヤーを迎えた今井美樹から届いたニュー・シングル「memories」は、パートナーである布袋寅泰をプロデューサーに迎えた作品。今井美樹、布袋寅泰といえば「PRIDE」だが、その「PRIDE」が生まれた1996年からも15年という節目のタイミングでもある。
それだけに、今回の「memories」にふたりが注ぎ込んだ想いの大きさは想像に難くない。でも、無駄に肩肘張ってるような感じはまったく見せないところが本当に素晴らしいのだ。しいて言うなら、イントロと間奏に響く布袋寅泰のギターサウンドにプロデューサーの意気込みがにじみでているのだが、それでも主役である今井美樹のボーカルはいたって平熱。彼女の歌からは、どんな内容の曲だとしても、いつだって微笑みを感じさせてもらえる。その一聴して今井美樹だとわかる、穏やかな声、ボーカルスタイルを最大限に引き立てるメロディやアレンジからは、プロデューサー布袋寅泰の懐の深さと、ボーカリスト今井美樹との抜群の相性を再認識させられた。まさに、パートナーである。
そしてこの曲から最初に感じたのは、はしだのりひことシューベルツの名曲「風」に通じるような懐かしくも秀逸なメロディの聴き心地のよさ。ただ、決して古くさいとか、後ろ向きな“メモリーズ”を歌ってるなんてことではなくて、むしろ、彼女の微笑みとともに光射す未来を感じさせるような曲なのだ。
昭和の名曲の匂いをメロディにたたえた「memories」のカップリングだからってことではないと思うが、2曲目は越路吹雪による名曲「ラストダンスは私に」のカバー。大橋トリオとの素晴らしいコラボレーションを実現させていて、楽曲やアレンジのテイストが見事に「memories」と整合性のとれたパッケージになっている。 美しい思い出と、未来。変わることのない今井美樹の優しい歌が、静かにそんな景色を心の中に映し見せてくれる。
【 文:小野瀬正人(memory motel)】