レビュー
清 竜人 | 2011.03.02
RHYMESTERの凄いところは、ポリティカルな問題でも、軽やかに、一見それとは感じさせずに、気づくとそれについて深く考えさせられてるところ。声高に問題提起することなく、諭すことなく、いわば直接言わずして、色々な"今やるべきこと"を気づかせてくれる。ホント、その"粋(いき)"や"いなせ"には毎度のことながら感心させられる。
2年に渡る活動休止以降、より人生や生き方というロングスパン性溢れるリリックや、相変わらずの身の回り感を、ポジティブさやブレイブ感を持って伝えている感のある彼ら。「BACK AGAIN~」と声だかにシャウトしながらも、世の中年世代にまでも、”よし俺も!!”と思わせ、軽さ、聴きやすさ、伝わりやすさを擁し、しかし、その中にキチンと潜ませている凄さをも、まざまざと見せつけられた前作アルバム『マニフェスト』から1年。彼らのキャリアの中では断トツに短いタームで届けられた(笑)、このニューアルバム『POP LIFE』は、市井の人々の中に横たわっている身辺問題や社会問題を、池上彰のニュース解説ばりに分りやすい例えやシチュエーションと共に我々に時にユルく、時に激しく突きつけてくる。
<こんな時代だからこそあえて俺は歌うゼ、そして、歌い続けるゼ>との気高く響くマニュフェストと、<さぁ、お前もそろそろ自分の歌を歌ったらどうだい?>と、聴く者に再び世に自分の歌(ここで言う歌は発言や思っていること等の意)を歌うことを促す「そしてまた歌い出す」。"見てろ、行けるところまでいってやるゼ!!"との力強い意志と、彼らがこれから向かわんとしている先を示唆しているかのように響く「Just Do It!」、神経症、心身症、ストレスからくる病気等をコミカルに描きつつ、”笑って聴いているけど、君もかもよ?”と揶揄しているように映る「ほとんどビョーキ」、子育てからのストレスや育児ノイローゼ、そして、それらが引き起こす幼児虐待や育児放棄等の問題提起と、その子育てをみんなでフォローしてあげようと促す「Hands」。
一見、隣人問題をシニカルやペーソスを交え伝ているようだが、実は日中問題をラップしているかのようにも響く「ザ・ネイバーズ」、晴天と晴天の霹靂の間に俺とお前の人生があると、何だかんだいって昔からの親友性やその大切さを想い起させてくれるタイトル曲「POP LIFE」。続けてはいるが、未だ越えられぬ先人と、いつの日かそれを超え、オリジナルな存在であることを目指し続ける宣言に映る「Born To Lose」。
今出来ることをやることで、自身が絶えず前に向かい、上を目指していることに改めて気づかされ、"いや、それでいいんだ!!"と褒められているような日昇感溢れる「Walk This Way」。エネミ―に対してのへイタ―を突きつける「余計なお世話だバカヤロウ」等が収まっている今作。
これは前作『マニフェスト』にも大きく通ずるところなのだが、"そのまま信じて真っ直ぐいけ、その向こうにお前の望む時代が待っているのだから"とラップしてくれているように響くチューンが多い感のある今作。前作『マニュフェスト』にて歌われた「その時立てろ親指を」の、その時が、今作『POP LIFE』では、「輝いている 今この瞬間」と歌われ、立てた親指が、輝く光の中、ガッツポーズをしている自分に出逢えた気がした。
分ったよ。諦めずに、まだこの道をとことん進み続けるよ。また、今回もRHYMESTERに大事なことを教わった。
【 文:池田スカオ和宏 】