レビュー

Hilcrhyme | 2011.03.04

気高く、プライド高く、群れを必要とせず、ケモノ道をただ一匹でも突き進む。”これだ!!”と狙いをつけた獲物はハズさず猛進していく。それでいて颯爽でいて聡明...。これが僕が持っている「狼」のイメージだ。

しかし、ヒルクライムの新曲「臆病な狼」の中で描かれている狼は上記とは違う。いや、後半は近いが、前半は真逆に描かれている。

「何かにいつも強がって何かにいつも怖がってる 大きな声で争い避ける臆病な狼」 「臆病」と「慎重」とは違う。しかし、ヒルクライムのこの新曲ではあえて、慎重で冷静、それでいて虎視眈々と次の獲物を狙う狼の生態を、人間のキャラクターに置き換えて、「慎重」ではなくあえて「臆病」と称する。そう、ここで歌われる狼は、「臆病」と称されながらも、実は思慮深く、虎視眈々と、冷静沈着に相手を見据え、己の道を独尊的に進みゆく存在の代名詞。一見猪突に見えるが、キチンと自分なりの攻めどころを見つけ、立ち向かい、行動する存在のことだ。いや、もしかしたらそこには、対象に対しての揶揄も含まれているのかもしれない。

今回の曲は彼らには珍しく先鋭的。その切り味鋭いフロウに乗った攻め感溢れるリリックが、聴く者に問い、自分の場合を思い返させる。

シンセベースとノイジ―なシンセ、深く重いバウンス性溢れるキックを素地に、エレガントなピアノとスペイシ―な電子音系のウワモノがエレクトロ感を醸し出しつつも、時折切り込み、絡み付くブロー感やアドリブ感あふれるサックスソロもかっこいいトラックが特徴だ。特にアウトロの雄叫びに絡み付くサックスソロは鳥肌もの。多くの人が一緒に雄たけびをあげたくなることだろう。

「何かにいつも強がって 何かにいつも怖がってる 大きな牙を隠し持っている狼」 このフレーズに、まるで自分のことを歌われているとドキッとした方も多いのではないだろうか。だけど、それはあなただけではなく、僕も含む、この楽曲を聴いた誰もが思い当たること。そして、それは実はヒルクライム自身が外に向けて放った布告なのかも。 スタンドアローン感や悠々しさ、雄々さを醸し出している同曲は、どこか音楽シーンや周りに言われる云々に対しての彼らなりの回答にも響く。これを聴き、"俺も何かやってやる!!"的な秘めた高揚感を覚える人も多そうだ。

狼なのに(笑)、非常に虎視眈々さを感じ、彼らの改めての所信表明のようにも映る今回の「臆病な狼」。“俺はけっして臆病なのではない、思慮深いだけだ。そして、隙あらば、あわよくば、その椅子を狙ってるんだゼ!!”そんな声までも、聴こえてきそうだ。 ここにきてカウンター的にあえて先鋭的な作品を彼らから突きつけられ、あなたは? 周りのみんなは? どのようなアクションを起こすのだろう? 次は<臆病な狼たち>からの反撃を待つ!!

【 文:池田スカオ和宏 】

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リリース情報

臆病な狼

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臆病な狼

発売日: 2011年02月23日

価格: ¥ 1,429(本体)+税

レーベル: ユニバーサルJ

収録曲

1. 臆病な狼
2. 息吹

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