レビュー
THE BAWDIES | 2011.03.30
THE BAWDIESもAIも表現形態は違えど、それぞれの曲や歌から滲み出ているのは、まぎれもなくR&B(リズム・アンド・ブルーズ。この場合は1960年代のオリジナルR&Bを指す)だ。それをBAWDIESなら、マージービートやブリティッシュビート、ガレージ等の彼らの音楽遍歴を交え、自分たちのスタイルへと昇華。そしてROYのあの渋い喉を通し伝えられ。一方のAIは、R&Bに彼女のルーツとも言えるゴスペルや、R&B以降のブラックミュージックを交えたパワフルでホット、そしてソウルフルな歌唱にて伝えている。
とは言え、この両者の放つR&Bは決定的に違う。片やBAWDIESは、アトランティック系やスタックス系のR&B的要素は多分に含みながらも、それらをいわゆるブリティッシュビート系のR&Bにて昇華。モッド性溢れるR&Bとして伝えている。なので、熱く魂を感じながらも、そこには、どこかスマートでモダ―ン、汗もだが、どこかにクールさも感じることだろう。片やAIの方は、ガッツリとした熱唱/歌い上げのアメリカンR&Bのシンガー。実にソウルフルに感情移入たっぷりに各曲熱くパワフルに伝えるのが信条だったりする。
その根底は一緒ながら、違った音楽性を持つ2組がこの度コラボ。どのようなデュエットが飛び出してくるか? 興味津津でプレイボタンを押した。
再びLOVE PSYCHEDELICOのNAOKIをプロデューサーに迎え、制作された今作。では、まずはその注目のコラボ曲であるタイトル曲の「LOVE YOU NEED YOU feat.AI」から。グル―ヴィーでR&R性溢れるBAWDIESの放つブリティッシュビートに、ROYの渋い歌声。そして、そこにハモり、ユニゾンを加えるAIの熱さを湛えたパワフルな歌声が炸裂した同曲。英語詞なところ(THE BAWDIESは英語詞バンドなのです)も彼女の面目躍如とばかりに、実に生き生きと伸びやかにその歌声を響き渡らせている。全編に渡り、まるでツインボーカル!?とでも言わんばかりにROYとAIによるボーカルの熱い掛け合いが、曲のはしばしでスパーク。しかも、ラストへと向かうバンドの高揚感とアドリブ感たっぷりにフェイク合戦を聴かせる両ボーカルのチェイスには、ゾクゾクされっぱなしだ。
M-2には、「WHAT YOU SAY」を収録。こちらもAIではないが、女性シンガー(もしかしたらファルセットな男性コーラス?)の加わりも印象的。バンドサウンドにホーン隊も加わり、メンフィスソウルな仕上がりを楽しませてくれる。
そして、M-3.には、レイ・チャールズの「HIT THE ROAD JACK」を、こちらもAiとコラボレートにてカバー。オリジナルより若干テンポも早目。原曲のゴージャスさに対し、こちらはロカビリーやガレージ性の高いアレンジにて対抗している。よりクールさやスリリングさも増し、オリジナルでは女性コーラスグループが担当していた相の手コーラス部も、AIが一人でアドリブも交え多重コーラスで担っており、それがより掛け合いの臨場感を際立たせている。
この2組ならではの融合感がベストマッチを見せている同盤。片やグイグイとグル―ヴィーに、片やグリグリとソウルフルに、それぞれのR&Bスピリッツが盤から溢れ出てきそうな1枚だ。
【 文:池田スカオ和宏 】