レビュー

YUKI | 2011.04.06

 残念ながら僕は参加できなかったのだが、昨年夏~秋に行われた、YUKI最大規模のツアー『YUKI concert tour 2010「うれしくって抱きあうよ」』のうち、数か所にて、今回のシングル「ひみつ」のプロトタイプのナンバーが披露されたという。それを体感した知人によると、今回のシングルとは多少趣きも違っていたようだ。

 もし、この歌が、今の「ひみつ」のままで表現されていたら、僕はどんな顔をして、その場でそれを聴いていただろう?

 幸せそうな顔をしていただろうか? うっとりとした表情をしていただろうか? ちょっと遠い目をしていただろうか? 何かを思い返したり、自分の今を投影していたりして、ちょっぴり哀しそうな顔をしただろうか?

 YUKIのこの「ひみつ」は、きっと聴いた者に、そのような色々な表情を浮かばせる楽曲だろう。悲しそうな歌なんだけど、悲しいだけでは終わらない。刹那なんだけど、どこか希望や祈りに似た明るさや前向き感がある。そして、肝はやはり楽曲全体にそこはかと漂う多福感。多くの人がこの曲を聴いて、”ただ、ただ、今のこの幸せがずーっと続いてくれたらいいのに…”と一緒に思うことだろう。そう、これは、シチュエーションや物語は異なるが、誰もが一度は切に願い、祈った記憶。そして、この歌は、その者たちに、やさしく柔らかく、その時の温かさや甘さを、そこはかとない幸福性も交え、思い返させてくれる。

 ご存じの方も多いとは思うが、前述のツアーは、バンドとストリングスやホーン隊というゴージャスなバックと共に演出された特別なツアーであった。そのメンバーたちが、今回の「ひみつ」に於いては再び集結。ミディアムテンポのバラードを、時にドリーミーに、時にこれからを目指すブレイブ感を交え、ロマンティックに、ファンタジーに演出している。そして、そこに優しく柔らかく、甘く紡ぐYUKIの歌声。楽曲の所々から溢れ出てくるように広がっていく、"愛しい人とずっとこのまま一緒にいれたらいいのに..."との、ささやかながら一番難しいお願いが、歌を通して聴く者の胸をキュンとさせる。

 しかし、不思議なのは、歌詞が悲しさを帯びている反面。聴いていると、どこかほのかな幸せ感を帯びているところ。そこが、この「ひみつ」の先に待っている永遠or結末を知る前の<自身を包む、最も幸福なひと時>へと導いてくれる。

 そして、是非、見て欲しいのが歌詞カード。そこで、最後の歌われる、「君がいい」が、どのような表記になっているか確認して欲しい。

 そう、そこからこの物語の実態が、もう一度あなたの中に広がっていくにちがいない。

【 文:池田スカオ和宏 】

tag一覧 シングル 女性ボーカル YUKI

リリース情報

ひみつ

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ひみつ

発売日: 2011年04月06日

価格: ¥ 972(本体)+税

レーベル: ERJ

収録曲

1. ひみつ
2. Wild Ladies

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