レビュー
GIRL NEXT DOOR | 2011.05.02
水嶋ヒロがミュージックビデオの脚本・監督、そして出演もしたことで大きな話題になっている、GIRL NEXT DOORのニューシングル「Silent Scream」。
ボーカルの千紗が歌詞で訴えているのは、不安に飲み込まれそうになったときに、自分の想いや希望の言葉を強く叫んでみて、というメッセージだ。恐らく、彼女自身がツイッターなどを通してファンをはじめとした多くの人の悩みや不安の声を目にしたことで、この曲の歌詞のヒントを得たのではないだろうか。確かに、そうした声がインターネットから流れてくることは珍しくないので、千紗がそんな時代性を反映してこの楽曲に想いを込めたのだろう。
そして、このシングルのあとにリリースとなるのが3枚目のニューアルバム『Destination』。2010年1月にリリースされた2ndアルバムのタイトルが『NEXT FUTURE』で、つまり“次なる未来”だったわけだから、“目的地”を意味するタイトルがつけられた今回の3rdアルバムこそが、ガルネクがこの1年3ヵ月の時間のなかで描いてきた未来である。
鈴木大輔のきらびやかでダンサブルなシンセサウンドや打ち込みを絶対的な核にしながらも、井上裕治の激しくも温かみのあるギタープレイが有機的に作用していることと、あらゆる壁を突き破るかのような千紗のまっすぐなボーカルの存在が、リスナーとの距離をぐっと引き寄せている。そんなガルネクの基本スタイルに揺らぎはなく、さらに高いクオリティやバラエティ感で楽しませてくれるのだが、特にアルバムのラストに収録された「ありがとう」が印象的だった。華美なサウンドの装飾を排して、ボーカルや歌詞、アレンジや演奏のすべてから人間らしい温度感が心地よく伝わってくる、3人のバランスも秀逸なミディアムナンバーに仕上がっているのだ。パブリックイメージとは違うこの曲を耳にすれば、それがガルネクだと気づく人は少ないだろう。でも、そこには3人のネイキッドで本質的な魅力が溢れている楽曲だと言える。
今回のアルバム『Destination』は、あくまでも途中の“目的地”に過ぎず、決してゴールではない。GIRL NEXT DOORは、さらなる未来、目的地へとこれからも突き進んでいくのだろう。
【 文:小野瀬正人(memory motel)】