レビュー

ストレイテナー | 2011.04.13

 "今年1月に発売となった初のセルフカバー集『STOUT』で見せた、ライブ感やバンド感とは、ある意味対照的な作品だなぁ..."。

これが、このストレイテナーのダブルAサイドシングル「VANDALISM / SILLY PARADE」のM-1.「VANDALISM -Prototype-」を最初に聴いた時の僕の印象だった。"『STOUT』で見せた、このバンドならではの四位一体の全体感が、プレイボタンを押した直後から飛び出してくるのだろう"と身構えていたところ飛び込んできたのは、打ち込みドラムのループやエレクトロなウワモノやエフェクトの類。それらはまるで"俺たちは臨場感をラップトップ的なアプローチでも表わせるんだ!!"といったアピールのようにも響いた。

しかし、この盤を繰り返し聴くうちに、その考えはちょっと変わってきた。今回のシングルもまぎれもなく、バンド・ストレイテナーを生々しく伝えたもの。それはその後の「SILLY PARADE」や「VANDALISM」と聴き進め、再び、「VANDALISM -Prototype-」を聴き返した時に気がついた。

この盤は、一度セオリー通りの流れで聴いてもらい。その後、一度はM-3、M-2、M-1の順で聴いて欲しい。そうすればきっと、”ああ、これもやっぱりストレイテナーじゃん”とあなたも同調してくれることだろう。

 緻密に絡み合い、紡ぎあって、一つのサウンドを形成させているM-3「VANDALISM」は、ヒモを編んで太い綱を作る、そんな光景を思い起こさせた。あえてのシンプルなドラムループから始め、クールでマシナリー、無機質に進みながらも、間や後半では、これでもかのバンド感の応酬。スタジオライヴ的な臨場感と迫力にいつの間にか雪崩込んでおり、最後はとてつもない高揚感や興奮へと引き上げてくれ、そこに惹き込まれている自分がいた。

そして、カッコイイ、ギターリフと臨場感たっぷりのドラム、そこにエフェクティブさを交えたアジテーションチックなボーカルと、サビのストレートさと解放感がたまらないM-2「SILLY PARADE」は、これまた彼らの高いプレイヤビリティが何か一つの目標に向かい、各々の音を絡め合い、大きな塊として提示してくれるナンバー。間にインサートされた3拍子が、逆に後半への起爆を生んでいる。

 そして、M-3は、プロトタイプと表記はしてあるものの、自分的には「VANDALISM」のリミックスやブラッシュアップナンバーと捉えたい。ドラムの音もあえて打ち込み(懐かしのTR-808的音源)に差替え、それがいつの間にかナカヤマの生のドラムに差し変わっていたり、自分たち以外の音も色々加え、新たなるカッコ良さや興奮感をそこに見出している。

まさに今回の1枚は、構築性と衝動性、その両性を同居させることにより、何か彼ららしい融合を見せられた気がした。

 よくよく見たら同曲のタイトルである「VANDALISM」は、「美しいものや尊ぶべきものを、破壊もしくは汚染する行為」との意味を持つ言葉。うーん、まさしく名は体を表わしているではないか。壊しては作り、創造しては壊す。まさしくVANDALISTストレイテナーにぴったりな1枚だ。

【 文:池田スカオ和宏 】

tag一覧 シングル ストレイテナー 男性ボーカル

リリース情報

VANDALISM/SILLY PARADE

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VANDALISM/SILLY PARADE

発売日: 2011年04月13日

価格: ¥ 1,429(本体)+税

レーベル: EMIミュージックジャパン

収録曲

ディスク:1
1. VANDALISM -Prototype-
2. SILLY PARADE
3. VANDALISM
4. VANDALISM -instrumental-
5. SILLY PARADE -instrumental-
ディスク:2
1. VANDALISM (EXTRA VIDEO CLIP)
2. SILLY PARADE (EXTRA VIDEO CLIP)
3. VANISH (STUDIO STOUT)
4. BERSERKER TUNE (STUDIO STOUT)

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