正直、ここ3枚のシングルからして、もっと"さぁ、一緒にこの困難を乗り越えようぜ!!"的な内容を予想していた。それだけに、それに留まらぬ、さまざまなトピックが散りばめられていることに、二ヤリとさせられたKREVAのニューアルバム『GO』。

「挑め」「KILA KILA」「C’mon, Let’s go」「EGAO」「探究心」と、これまでのシングルヒット曲を始め、ザクザクしたヘビーなディスト―ションギターの上、今の世のエマージェンシーを緊張感たっぷりに伝える「基準」で、いきなり高いハードルを自身でセットし、ル―ズなフロウも印象的な「呪文」、アーバンで軽快に滑り出して行くスムーズでメローなラップの「runnin’ runnin’」、エレクトロファンクに、”あるものはあるが、ないものはない、だけど、問題はそんなことではない”と確信を突く「パーティはIZUKO?」の新曲群は、いずれも耳を奪うものばかり。

そして、フィーチャリングに、従来のラッパーではなく、あえてシンガーのみを起用しているのも今作の特徴。三浦大知の甘くダンサブルでタクシーな歌声をフィーチャーした「蜃気楼」、”えっ、これって阿部真央?”と驚いた。彼女の歌声のスイートで極めて女性的、そして少々アンニュイな面を上手く引き出した「微炭酸シンドローム」の2曲は、このアルバムの中でも白眉ものだ。
震災に際する頑張れソングが溢れる中、その次のレベルへと人々を引き上げる役割を自覚しているかのようにも感じる今作。もしかしてKREVAは、その辺りを知っていて今作を作り上げたのかもしれない。このアルバムを何度も聴き返すうちに、なんとなくそう思った。

【 文：池田スカオ和宏 】

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