レビュー
曽根由希江 | 2011.10.27
曽根由希江はこの1年で、とても成長している。
ドラマ「おみやさん」の主題歌に起用された前作「HOME」に引き続き、テレビ東京のドラマ24『ここが噂のエル・パラシオ』のエンディングテーマに決定した3枚目のシングル「君のとなりに」を通して聴き、まず、そう感じた。2形態で発売される本作には、本人曰く、「いちばん最初の小さな一歩」である「あおげばとうとし」(09年2月に配信限定でリリース)の弾き語りが初回盤に、前述の2ndシングル「HOME」(11年5月リリース)の弾き語りが通常版に収録されている。
この2曲を聴き比べると、表面的にはピアノの手数の違いが浮き彫りになるが、それ以上に、歌声にこれまでと違う響きがあることに気づく。そこには、明らかに『この歌を届けたいんだ』と強く願う、聴き手の存在が見える。この1年で数多くのステージを経験してきたことに加え、レギュラーでパーソナリティーを務めているラジオで、毎週、中高生のリスナーと触れ合っていることも影響しているのだろう。最近はライブでも「聴いてもらいたい」という気持ちが積極的に出ていることが分かるし、タイトル曲「君のとなりに」は、これまでにないくらい、彼女と聴き手の心をシンパシーという名の感情でつなぐ、とかく共感度の高い楽曲となっている。
「恋愛や勉強に思い悩んでる学生の方たちや、同世代の女の子と同じ気持ちになりたいっていう思いがあって。ただ、『共感してもらいたい』と言っても、誰もが『そうだよね』って感じる曲ではなくて、心の奥底にはあるけど、誰にも言えずに閉じ込めちゃってる気持ちを歌いたいと思ったんです。私自身、誰にも言えない想いを抱えていた学生時代に、音楽に代弁してもらった経験があって。私が言えなかった気持ちを、この歌が言ってくれてるって感じることで、気持ちが楽になってた。恋人や友達には言えないけど、誰もが一度はめぐったことのある感情をぶつけた音楽。そんな曲を書けたらいいなって思ってましたね」四つ打ちのバスドラがせつなさを煽る、今っぽいR&B風のアレンジに驚く方も多いかもしれないが、ぐっとくるメロディラインと歌詞は、等身大の彼女らしさであふれている。恋人の怪しい行動にやきもきする、女の子の複雑な心境を綴ったラブソングのなかの主人公は、彼女自身の経験でもあり、いま、恋に悩んでいるあなたともよく似た女の子であるはずだ。
「相手のことを疑ってはダメだって分かってるんだけど、好きだからこそ不安になって、どんどん嫌な想像が巡って、やっぱり疑ってしまう。疑ってるんだけど、相手に嫌われたくないから、直接は聞けない。相手のことが好きだからこそ、相手の言葉に不安を感じたり、疑ってしまうっていう。それは、女の子の純粋できれいな気持ちだと思うんですけど、大人になってみると、“好き”という思いばかりがあふれてしまっていて、向き合わずに、隣に座ってるだけの恋なのかなって思って。だから、このタイトルは、正面から向き合うのではなくて、隣にいたいっていう恋愛の状態を表してるんですね。彼の行動や言動はどうなのか? 彼女が吐き出した感情は怖いものなのか? この曲をきっかけに、女の子同士で恋バナに発展してもらえたら嬉しいし、誰かひとりでもいいから、同じ気持ちになってくれたらいいなって思いますね」
【 取材・文:永堀アツオ 】