レビュー
Applicat Spectra | 2011.11.09
11月9日にリリースされたシングル「セントエルモ」が「CDTV」の11月度エンディングテーマに決まり、にわかに注目度が高まっている大阪出身の4人組バンド、Applicat Spectra。
ツインギターにドラム、ベースボーカルという極めてシンプルな編成ながら、ライブとなるとフロントのメンバー3人の前にはシンセやサンプリング・パッド、アコギが並び、まるでストリート・パフォーマー的な楽団のごとし。そこから紡ぎ出されるサウンドは、繊細でキラキラした、美しいギターロックだ。
ちなみに、バンド名や歌詞、彼らの企画したライブ・タイトル(=“ネコ座流星群”)からもおわかりのように、メンバー全員がかなりの猫好きらしい。だから?……と言われたらそれまでだが、たまたまネコに象徴される事柄が、偶然にもバンドの本質を表しているようにも思える。愛らしさやしなやかさを持ち、そして予測不能で神秘的……。
まず「セントエルモ」を聴いていただくと、美しいメロディーとともに、シンプルにして 深い意味合いを感じさせる歌詞に気づくはず。まるで、宇宙と細胞が共存するような世界観。バンドが作るこの印象的な音楽は、メインコンポーザーで あるベースボーカルのナカノシンイチから生まれる感性によるところが大きい。
ちなみに、カップリングの「イロドリの種」には、かなりシビアなメッ セージも盛り込まれている。それが、女性の声かと間違えるような彼の清らかなボーカルで歌われることで純粋に響くから不思議だ。ナカノシンイチ自身、ライブのMCでよく、「“キレイなものもそうじゃないもの”も“好きなことも嫌いなこと”も全部愛せるようになりたい」と語っているが、ドリーミーなサウンドにリアリティーがつまっているという意外性が新鮮だ。
この相反する感情、状況、現象を内包しつつ、この先彼らが聴く者に発信していく“歌”が楽しみでならない。もちろん、彼らは理論武装で固められたバンドではないわけで、ライブとなれば本能的に楽しめるパフォーマンスが体験できることは明記しておこう。それらの要素に前述のネコ科らしさ……を感じた次第である。今後もそのキラキラしたサウンドで、いろんな表情を届けてくれるに違いない。まるでクルクル変化するネコの目のように。
【 文:海江敦士 】