「歩いていこう、歩いていこう」と、執拗に何度も自分に言い聞かせるようにリフレインされていたフレーズが、ラストのバースでは、「歩いていく　歩いていく」に変わっている。この変化や流れに、今回のいきものがかりのニューシングル「歩いていこう」の伝えたいことや、心情の移り変わりが集約されているように思える。

言わずもがな、「歩いていこう」と「歩いていく」の種は違う。前者は、自分を鼓舞させる、もしくは、一緒に歩いていこうの類。そして、後者は自主的で能動的にして、自分１人でも進んで行く、強い意志を含んだ言葉だ。
TBS系ドラマ「ランナウェイ~愛する君のために」の主題歌として現在絶賛起用されている、吉岡の伸びやかで力強いボーカルが、昭和的歌謡曲的なメロディに乗った同曲。アレンジを手掛けるのは、数々のトップアーティストのプロデュースを担当し、いきものがかりバンドのバンマスでもある、本間昭光だ。ストリングスがドラマティックさを演出し、ラストに切り込んでくる、スライドの効いた泣きのギターソロも楽曲をドラマティックな演出感に泣きの部分を加えている。

そして、M-2には、アコギのクリスピーなエバーグリーンなカッティングと、ハーモニカも効いた、ブライトなナンバー「my rain」を収録。なんか雨上がりの露に濡れながらも、活き活きとしている草花が思い浮かんでくる同曲。不思議と、こちらに感じるのは、走り出したくなるような感覚だったりする。

どっしりと一歩一歩、この先の不安を時折り思いながら、ゆっくりとだけど確実に誠実に真摯に進んで行く所存を歌った「歩いていこう」。また、追い風も味方につけるような、走りだしたくなる「my rain」。同じ前に進むことを謳いながらも対照的に表わしたこの2曲が収まっているのは、非常に興味深いところだ。
と、ここまで書いていて、今回のジャケットの結びつきにようやく気がついた。そうだ。そうだったのか!!　ヤラれた(笑)。

【 文：池田スカオ和宏 】