レビュー
ASIAN KUNG-FU GENERATION | 2011.11.29
昨年6月に発表したアルバム『マジックディスク』は、シンセやストリングスなどを導入した、まさしくアジアン・カンフー・ジェネレーションの新たな章の幕開けとなる作品だった。「マーチングバンド」は、それから1年半ぶりとなるニューシングル。心をかき立てられるようなエモーショナルなギターとドラムのビート、じわじわと高鳴っていくパワーを秘めたメロディとサウンドがとにかく小気味いい。希望に向けて踏み出していく若者へ“開け 心よ”“光れ 心よ”とエールを送るように描かれた歌詞を、後藤正文は低い声と力強い声、ファルセットを使い歌い上げていく。全てが上手くいくわけではないが、それでも生きていくのが人間。“行け”といい放つのが、彼らなりのやさしさでもある。この「マーチングバンド」は、若者だけでなく、全ての人のやる気を促すような力を持った楽曲といっていい。
そしてカップリング曲の「N2」は、これまでのアジカンには無かった、エフェクトの効いたギターとボーカルが印象的なタイトなナンバー。今の日本を取り巻く“ウソ”を辛辣に訴える歌詞は彼らの意思表明である。
3曲目に収録された「オールドスクール」は、ベースの山田貴洋が作曲を担当した、突き抜けるようなメロディが響く疾走感溢れる楽曲。閉ざされた心のドアを開ける、前向きな気持ちを促す歌詞がサウンドととてもマッチしている。
それぞれカラーの違う楽曲が並んだ今回のシングルは、まさに現在のアジカンを集約した注目の1枚だ。
【 文:土屋恵介 】