レビュー
チャットモンチー | 2012.02.01
満月でなくてはならなかったんだろうと思う。橋本絵莉子と福岡晃子、ふたりになったチャットモンチーが堂々放つ3週連続リリース、その第一弾を飾るシングルが「満月に吠えろ」だ。高橋久美子の脱退から約4ヵ月。心の内をさらけ出し鋭く綴られた福岡の詞、橋本の力強くも軽やかな歌はそのままふたりの意思表明に違いない。どうにもできない悲しみに直面してなお、痛みもやさしい記憶も丸抱えで進むことを決意したふたりの、のっぴきならない第一歩を照らすのは凛として冴えた月明かりこそがふさわしい。
ベースからドラムへと転向した福岡のこれまた潔すぎる決断に仰天した音楽ファンも多いだろうが、今作に鳴り渡る朗々たるアンサンブルを耳にすれば、その選択がごくごく必然の流れであったと納得できるはずだ。もちろん拙さはある。しかしなんら物怖じすることなく、伸びやかに奏でられるバンド・サウンドは技巧を越えて聴く者の背中さえも押すだろう。声のエキストラに招集された総勢20名を除けば、サポートも一切起用せず、当然ながらベースも使わず、ギターとドラムの2ピース・バンドとして可能性をぞんぶんに追求した今作。通奏低音のごとく楽曲の疾走感を支えて新鮮なギターのループもチャレンジのひとつであろうし、唸りをあげるギター・ソロと20人分の咆哮が重なる間奏は楽しくも圧巻だ。また橋本と福岡の連弾によるカップリングのピアノ・バージョンも聴き逃せない。
ともあれチャットモンチーは走り出した。そうして連綿とふたりの道は続いていくのだろう。大丈夫、この歌はとまらない。
【 文・本間夕子 】