レビュー
miwa | 2012.01.31
"えっ!?"。たぶん、miwaのこの新曲「片想い」のプレイボタンを押した多くの人が、流れてくるその歌い出しを聴いて、そう思うことだろう。少なくとも僕は凄く驚いた。それは中身を間違えてかけてしまったのか?と思うほど。とは言え、歌声自体は、まぎれもなくmiwaの声だし...。
出だしからピアノと歌から、しっとりと始まる同曲。ピアノですよ、ピ・ア・ノ。これまで、miwa=アコースティックギターのイメージを強く持っていただけに、この表現方法の変化には、たいそう驚かされた。昨年末はアコギ1本で全国を弾き語りで回ったツアー「acoguissimo」を行った彼女。これはもしかしたら、そのツアーで一旦彼女のこれまでの表現方法から新しい方向性へのシフト。言い変えると彼女の新章の始まりなのではないだろうか。
そんな、この「片思い」は、聴く者を切なくキュンとさせるミディアムバラード。ピアノとストリングスを中心としたサウンドの上、片想い中の少女の心情が次々と溢れ出、綴られている。加え、「好きだから伝えたい 私だけを見て欲しい」「あなたに恋していいですか? 私じゃダメかな?」のフレーズは、多くの人の気持ちの同化を生み、どこか主人公の小さな恋を応援したくさせることだろう。そして、もう一つの驚く面は、彼女の歌表現のアップ。ソフトリーながらそこに込める感情の移入度、艶やかさがこれまでとは全く違っているのだ。
とは言え、従来の彼女のファンの方もご安心を。M-2には、ギターを中心とした適度なダンサブルさと躍動感溢れる、パワフルな「クレアデルネ」を収録。変わってこちらでは、弾ける彼女のキュートで伸びやかな歌声が楽しめる。
今作はまさに彼女の新章。シンガーソングライターmiwaの表現の幅や今後のポテンシャルが更に引き上げるものとなっている。
【文:池田スカオ和宏】