レビュー
The SALOVERS | 2012.02.28
ロックフリークの間で、確実に注目を集め始めているバンド、The SALOVERSが、タワーレコードとライブ会場限定で、シングル「ディタラトウェンティ」をリリースした。
タイトルにある「ディタラ」は、造語で“チャラい様子を補強するイメージ”とのこと。何やら意味深なものを勘ぐってしまうが、実際のところ、特に意味はなく、関係者向けに配られた資料には“あまり気にしないでください”と書かれていた(お笑い的に言うところのフリなのか?・笑)。「トウェンティ」は“20”。楽曲の作詞・作曲を手がけている古館佑太郎(Vo)をはじめ、The SALOVERSのメンバーは、現在全員20歳だ。
“ハタチになる”ということは、過ぎ去ってしまった身からすると、大したことではなかったような気がするものだが、それを迎える当人からしてみると、かなり大問題である。そこへ足を踏み入れることで、人間として何かが終わってしまうような感覚。周りが少しずつ社会と関わり始めていくのに、今ひとつその階段を上れていない自分に対してのもどかしさや苛立ち、そして、このまま何となく大人になっていく諦めと、それに対しての抗い──「ディタラトゥエンティ」を聴くと、既に忘れてしまっていたあの頃の感情が蘇ってくる。
カップリングには、とにかく退屈だけど<まだまだ生きていく>と叫ぶ「仏教ソング」を収録。前述の資料には、“とりあえず放つ新曲”とも書かれており、彼らにとっては、ありのままのリアルを切り取っただけなのだろう。だが、そうでなければ産まれなかった、モラトリアム期間終了直前の焦燥感が、見事なまでに描かれている作品だ。
【 文:山口哲生 】