レビュー
ハナエ | 2012.03.09
ハナエは福岡出身のシンガーソングライター。6歳からピアノやエレクトーン、ギターなどに触れ、12歳で宅録を覚えるという、音楽に関してかなり早熟な子供時代を過ごしている。
そんな彼女が3月7日にリリースした2ndシングル「BLACK BERRY」は、フジテレビ系「グータンヌーボ」のテーマソングに選ばれており、聴いたことがある人も多いだろう。タイトル曲は、編曲として参加している亀田誠治のアレンジが光る(特にギターソロ!)、爽やかなポップソング。大切な人を想うと胸が苦しくて臆病になってしまう恋に落ちた女性の姿を、可愛らしくも透明感のあるハナエの魅力的な歌声が、鮮やかに彩る。
そんな純情可憐な楽曲とは一転、アートワークはちょっとグロテスクだ。床一面に敷き詰められた大量の黒いちご。それらが潰れて出た汁が、純白のロリータドレスを紅黒く染め上げる。その中で、彼女が誰かに想いを馳せ、佇んでいるジャケット写真は、ホラー映画にも使えそうな狂気をはらんでいる。PVは、ハットを被った白塗りの男や、壊れた操り人形のような奇怪な動きをする黒いドレスを着た女性が登場し、秘密のお茶会が開かれるといった「不思議の国のアリス」さながらのダークファンタジー。彼女が自分のフェイバリットに、ティム・バートンやヤン・シュヴァンクマイエルの名前を挙げるのも納得な映像に仕上がっている。
普遍的なテーマを独自の美的センスで描くハナエは、ガールズポップ界に新しい風を送り込んでくれる存在になるだろう。
【文:山口哲生】