レビュー
The Birthday | 2012.04.10
The Birthdayがまたもや傑作を産み出した。シングルとしては1年ぶりのリリースとなる「ROKA」は、シンプルで無駄が一切ない、シンガロング必至のロックアンセム。昨年、ギターにフジイケンジが加入したことで生まれた化学反応が、ツアーを通して血肉となり、バンドが更に強靭となったことが、ありありと伝わってくる楽曲だ。
歌詞が沁みる。<悲しみのはしっこはいつも/忘れられて放っとかれる/いつの間にか何事も無かったような空気だ>は、どうしても3.11のことを想起させずにはいられない言葉が、あの日から1年が過ぎた日本の今を的確に抉り出す。こんなにも熱くて、悲しくて、暖かいメッセージが、力強いメロディーに乗せてズシンと響いてくるのだから、心が打ち震えないのが無理な話だ。
起源を遡れば、ロックンロールはやり切れない現実に反抗するため音楽であり、手段であり、魂である。進化の途中でいつのまにかすっぽりと抜け落ちてしまったロックの根源を、The Birthdayはいとも簡単に鳴らしてみせる。<それしか信じられるのが/無い世界に生まれたんだ>──ライヴでオーディエンスが、このフレーズを大合唱している光景を見たら、間違いなく泣くね、私は。
The Birthdayは早くも次のシングルを6月13日にリリースすることを発表。タイトルは「さよなら最終兵器」だ。なんとも意味深な曲名である。そして、チバユウスケの初ソロプロジェクト「SNAKE ON THE BEACH」も今秋リリースを目指して進行中。2012年は、The Birthdayにとって話題に事欠かない1年になりそうだ。
【文:山口哲生】