レビュー

平井堅 | 2012.05.30

 己を“歌バカ”というアイコンに(しかも非常にわかりやすい!)することで、歌声とその存在を武器にした感のある平井堅。歌バカという“生きざま”が、平井堅のブランド力になったと言ってもいいだろう。男性シンガーという括りで言えば、そのブランド力は、向かうところ敵なし、といった印象だ。どんな歌を歌っても“歌バカ=平井堅”という公式に、かっちり当てはまるようになった。このアイコン化による効果が、楽曲バリエーションに表れてきているように私は思う。特に、ここ数年の作品に顕著だ。泥臭い曲から、極上のポップスまで。もちろんこれまでも、同等の曲調はあったが、より一層、振り子を振り切り、いききった印象である。

 この大きくなった振れ幅で、新たな世界観を打ち出してきたのが、ニューシングル「告白」。ウェットで抒情的なメロディが特徴のミディアム・チューンは、70年代後半から80年代前半に、ヒットチャートを席捲した、ニューミュージック歌謡を思わせる。亀田誠治とタッグを組んだアレンジも秀逸。特に、タンゴを思わすメランコリックなフレーズが面白い。“いなたい”匂いぷんぷんのくせに、どこかハイソ&ハイセンスなサウンドの耳触りが、素晴らしい。天晴れ。女言葉を使った歌詞も、新機軸か。カップリングは、84年に公開された映画「Wの悲劇」(主演・薬師丸ひろ子)の主題歌「Woman“Wの悲劇”より」のカバー。ブレスまでもひとつの歌声として成立するように、丁寧に素直に歌っている平井。“歌バカ”の歌のニュアンスの繊細さと豊富さに注目。濃密なシングルだ。

【文・伊藤亜希】

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リリース情報

告白(初回生産限定盤)

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告白(初回生産限定盤)

発売日: 2012年05月30日

価格: ¥ 1,300(本体)+税

レーベル: DefSTAR RECORDS

収録曲

ディスク:1
1. 告白
2. Woman “Wの悲劇”より
3. 告白 -less vocal-
ディスク:2
1. KEN HIRAI TV Vol.1 (映像特典)

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