レビュー
住岡梨奈 | 2012.06.21
北海道出身、22歳のシンガーソングライターである住岡梨奈。高校生の時からアコースティック・ギターを弾き、地元の酪農大学に通いながらライヴ活動を行なっていたある時、そのステージをたまたま現在のスタッフが観ていたことが、デビューのきっかけ。そんな彼女が作る楽曲は、とても大きな景色の広がりを感じさせるナチュラルなムード。しかしJ-POPという既存の枠にとらわれない、自由で真っ白なキャンバスの中に自分らしい色を選んで描かれるからこそ、時折ハッとさせられる。
デビュー曲の「feel you」からは彼女の繊細な感性が、アコースティック・ギターの憂いと透明感のある音や、独特な高音と震えを持つ唄声から響いてきた。〈I feel so/満たされて見える景色はやさしい/あなたの目に映るものも同じ〉と唄う、その言葉選びのひとつひとつの中に、彼女の中にある、何とも言いがたい哀しみや欠落感、でも少しのことで心が晴れやかにもなる、日常のグラデーションを感じ取る。彼女のアコギの他、斎藤有太(Key)、玉田豊夢(D)、山口寛雄(B)、山内総一郎(G/フジファブリック)といったミュージシャンらの紡ぐサウンドも聴きどころ。朗らかで柔らかなムードの「カフェオレ」と、自身の前向きな想いを唄い上げる「grow」をカップリングに携え、住岡梨奈はスタートラインに立った。瑞々しさと初々しい可能性を感じさせるデビュー作だ。
【文:上野三樹】