レビュー
RADWIMPS | 2012.08.01
日常の中にある、絶えない緊張感。
この“緊張感”は、誰もが日々、生活していく中で、絶えまなく発生し続けている事実に対してのモノであろう。それは、自分の中から発生する場合もあるし、自分とは直接は関わりのないところで発生している場合もある。否、関わりが無いと思っているだけで、自分をとりまく環境の一部と思えば、実際は関係性を無視できないのが、正直なところだろう。しかしながら、人間は、莫大な情報に耳をふさぎ、そこに在る事実に目をつむる事を覚えてしまった。そうしないと、毎日を紡いでいくことができなくなったのである。それだけ、現実は、緊張感に満ちている。
この“緊張感”から目をそむけず、決して大げさにすることなく、音楽に落とし込んでいるのが、RADWIMPSというバンドではなかろうか。この“目をそらさない”視点こそ、このバンドの自覚であり、聴いた人を巻き込む、エネルギーの源なのではなかろうか。
タイトル曲「シュプレヒコール」は、マーチングのリズムを淡々と響かせながら、サビで劇的に展開するダイナミックなナンバー。M-2「独白」は、まさにタイトルどおり、独白のようなポエトリー・リーディング。声まで使ったサウンド・コラージュと言えそうなバックトラックは、とても表情豊かで秀逸。このバンドの音楽センスと、寸止めのような独特のバランスを感じさせる。M-3はインストゥルメンタル。ジャズ、もっと言ってしまえばフュージョンまでを彷彿させるアプローチに、バンドのスキルに驚きながら、彼らのルーツ面白さを想像し、興味をそそられてみたり。
バンドの自覚と意志が作りだす、このバンドにしかない緊張感が、しっかりと聴き手の中に鳴り響く1枚である。
【文:伊藤亜希】