レビュー
赤い公園 | 2012.09.19
本年、オルタネィティヴな一面を集めた黒盤と、ポップな面を集めた白盤という、対になる2枚のアルバムをリリースし、シーンにその名を轟かせた赤い公園。ふり幅のある濃密な楽曲、アグレッシヴなライヴパフォーマンス、センス不明のギャグ(でも笑っちゃうんだ、これが、なぜか)を入れ込んだ独特のライヴMCなどで、じわじわと実力をアピールしつつある、4人組、ガールズ・バンドである。
その赤い公園が、初のシングルをリリース。シングル3部作企画「赤い公園がみっつ ?困惑のシングル 闇・姫・冠?」の第1弾シングルとなる。7月に代官山UNITで開催されたワンマンライヴにて「赤い公園、唯一のダンスチューン!」と紹介された1曲だ。
初シングルのタイトルは「のぞき穴」。鬼気迫る演奏の迫力と、前衛的な楽曲展開が、闇での乱舞を彷彿させるダイナミックなナンバー。混沌としていてディープ&ちょいホラーな歌詞の世界観は、今回のビジュアルとの相乗効果で、昭和中期のアングラ演劇を思わせる一面も。引きずり込まれるような圧倒的な世界観、サウンドの瞬発力と破壊力が楽曲の、そしてこのバンドの最大の魅力だと思うが、じつはそこに、個人的には愛嬌を感じちゃったりしている。ボーカルの歌い回しや、バンドメンバーの叩きだす一音いちおん、サラリとしたアウトロなど、実に潔く、面白く、時にキュートで、とてもキャッチーだと思うのだ。なんか、加減を、体でわかっている感じ。そして私は、この加減こそ、赤い公園のこれからに直結する、彼女達の個性だと思う。
さて、次のシングルは、どんな加減でくるのかな、と。想像できなくて、ワクワクします。
【文・伊藤亜希】