ゴスペラーズ。ボーカル・グループというそのスタイルに加え、全員がリード・ボーカルをとれるという実力は、もはや説明不要だろう。そのイメージは、やはりラヴ・バラード……となるのではなかろうか。もちろんここも、ゴスペラーズの真骨頂であるが、彼らには、もうひとつ、結成当時から受け継がれてきた真骨頂がある。メンバー５人全員が歌い紡ぐアップチューンだ。この“もうひとつの真骨頂”は、デビュー前から彼らの活動の肝になっているライヴで、底力を発揮する。

　ニューシングル「STEP！」は、前述した彼らの真骨頂、両方が収録された濃密なシングルだ。タイトル曲は、ブライトなアップチューン。80年代半ば、例えば、ヒューイ・ルイス＆ザ・ニュースあたりを彷彿させる、米国パワーポップス然とした曲調＆アレンジが特徴。鮮やかなパスを繰り出すように、軽やかに変わっていくリードボーカルも、曲にどんどん表情を加えていく、じつにパワフル＆カラフルな1曲だ。安岡 優が手掛けた歌詩は、これでもかというほど、潔く、ストレート。このストレートさは、ゴスペラーズ史上、5本指に入るのでは？　ライヴに直結するフィジカルな言葉がズラリと並ぶ。カップリングは三拍子のミディアム・バラード。牧歌的でたゆたうようなメロディが特徴で、ボーカルも歌い出しから、まったく違う表情を見せている。このメリハリ、まさにゴスペラーズのライヴそのものではあるまいか。

　11月７日には、このシングルも収録されたニューアルバムが発売となる彼ら。直後には、全45公演を行う全国ツアーもスタートする。

　ゴスペラーズの真骨頂が、もうすぐ、全国各地で、花開く。

【文・伊藤亜希】