レビュー
MISIA | 2012.12.05
女性アーティストのプロデュースに定評のある布袋寅泰が、トップ・ボーカリストMISIAに楽曲を提供し、さらにはギタリストとしても参加したシングルが「Back In Love Again (feat.布袋寅泰)」だ。
布袋のコンポーザー&ギタリストとしての特長は、“期待を裏切らず、予想以上の効果を上げる”こと。まずMISIAに対して“みんなが期待するバラード”を提供し、「こんなギター・ソロだったらいいのにな」と想像するラインをきっちりと弾く。それでいて誰の予想をも超える作品を、今回も作り出してみせた。
対するMISIAは、おそらく心を真っ白にしてレコーディングに臨んだのだろう。実力のある正統派ボーカリストのみに許される伸びやかな声で、美しいシーンを現出させる。「ストンと胸に落ちて響いてくる素晴らしいメロディーと、グルーヴたっぷりのギター」というMISIAのコメントの真相はそこにある。傑出した歌手が、歌いながらメロディーが胸に落ちていく快感を、なんのフィルターもなく味わえるのは、リスナーにとって最高の歓びだ。
一方で「最高のボーカリストの隣でギターを弾くことは、ギタリストにとって至福の喜びだ」という布袋のコメントは、このコラボが幸福なものだったことを裏付けている。
堺雅人・主演の話題の映画『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』の主題歌「Back In Love Again」は、まさに2012年のラストを飾るにふさわしいバラードとして冬の街を温めてくれることだろう。
【文:平山雄一】