レビュー
NICO Touches the Walls | 2012.12.19
“洗練されたサイケデリア”とでも形容すべき、心地よい浮遊をたたえたバンド・サウンドが何とも気持ちいい。NICO Touches the Wallsのニューシングル「夢1号」は、このバンドの奥深い音楽性を感じさせてくれるナンバーだ。
この曲が生まれたのは、10月から12月にかけて行われた全国ツアー「ALGORHYTMIQUE」の準備中だった。ツアーで演奏するための新曲の制作期間に光村龍哉(Vo.)が夢の中で知らない曲を聴いた(正確にはミュージックビデオを見たらしい)のが、この曲の始まり。光村は寝起きの声でメロディをスケッチ、メンバーに聴かせたところ全員一致で「これをシングルにしよう」ということになったのだという。このフレキシブルな姿勢も、現在の彼らの調子の良さを物語っている。
ツアーのなかでも披露された「夢1号」は、“夢の中で生まれた”偶発的な楽曲ではあるが、きわめて“NICOらしい”楽曲でもある。洋楽テイストとJ-POPのポップ感覚が絶妙なバランスで混ざり合う音像、メンバーの卓越したプレイヤビリティ(この曲の場合はコーラスも)を活かしたアンサンブル、そして、美しく、セクシーな手触りを感じさせてくれるボーカル。幅広いファクターをひとつの楽曲のなかに凝縮しつつ、質の高いポップミュージックへと導く。それこそがNICO Touches the Wallsの魅力なのだと思う。
【文 : 森 朋之】