レビュー
サカナクション | 2013.01.23
ポップミュージックという、一般的概念と闘っているのではないか──そんなことを思わせる1曲。
全体を通したサウンドは、サウンド・コラージュやサウンド・アートに通じる緻密さ。楽曲の構成や展開も、一般的なポップミュージックとは異なり、決してわかりやすい形ではない。繰り返されるメロは覚えやすいが、かといって、即誰もが歌えるかといえばそうではない。
しかしながら、とことん、キャッチーだ。
曲全体をの感触を、耳が一発で覚えちゃう感じ。
メロディー、コーラス、サウンド、歌詞……と、すべての要素が、すべての場所で、どんぴしゃではまっていて、どこを切り取っても、サカナクションだと、さらにこの曲だとすぐ認識できるくらいキャッチーなのである。
通例ならば、メロディーで印象付けるキャッチーさを、楽曲全体で印象づけようとしているのではなかろうか。
1曲を通して、メロディーのような起伏をつけて印象づけるのは、90年代中盤以降のダンスミュージックの王道パターンのひとつでもあるが、どこを切り取ってもそれが成立していると感じられるのが面白いし、ポップミュージックの概念と真っ向勝負していると感じられる。
難しいことをわかりやすく、もっとキャッチーに。
ミュージシャンならば、誰もが抱える課題のひとつだと思うが、そこに新しい形でチャレンジした意欲作。
しかし、この曲が連ドラの主題歌になるなんて、サカナクションの音楽の浸透力ってのは、想像以上ですな。
今年も、これまで以上に、音楽シーンを引きあげて欲しいなぁと思います。
【文・伊藤亜希】