“geek sleep sheep”と書いて“ギーク　スリープ　シープ”と読む。メンバーは、百々和宏（Vo&G/MO’SOME TONEBENDER）、345（Vo&B/凛として時雨）、yukihiro（Dr/L’Arc?en?Ciel）の3名。2012年からライヴを中心に活動を展開。一切のプロモーションが無い中で、このメンツ、そしてその音楽性で注目を集め、満を持してのメジャーデビューとなった。

　タイトル曲の「hitsuji」は、シューゲイザーのアプローチのサウンドを浮遊感あるポップ・チューンに昇華した1曲。yukihiroのリズム・パターン、345の歌い方、百々が手掛けた歌詞など、それぞれのバンドのファンもアッと驚く“いつもと別の顔”を楽しむことができる。

　タイトな演奏によるシャープなサウンド。90年代グランジ経由のオルタネィティヴ感を十分に想起させるアレンジながら、ふわりと軽い。サウンド自体は硬質なのに柔らかさも感じる独特のムードを作り出している。メロディーだけじゃなく、コーラスや男女ボーカルの掛け合い、もっと言えばフレーズそのものまで、とことんキャッチーでポップ。なのに、スリリングで刺激的。メンバー３人の音楽ルーツと表現のセンスが、無理なく、そしてギリギリの均衡を保っているのが理由だろう。このギリギリ感とムードは、ほんと、音楽の奇跡だと思う。

　平成になって四半世紀。1980年代?1990年代の音楽を“懐古”ではなく、メンバーそれぞれの音楽に対するポテンシャルで、今の音として響かせることのできるバンドの登場だ。

【文：伊藤亜希】