レビュー
コブクロ | 2014.02.21
コブクロというアーティストの魅力は多々あれど。
そしてその魅力は、万人の知るところであるけれど。
個人的に面白いと思うのは、巧妙なボーカルの押し引きと、アレンジ・アプローチの幅の広さが、1曲の中に共存していること、である。
この2つが、スケール感あるメロディーと圧倒的なボーカル・スキル(掛け合いやハーモニーを含む)を軸にした楽曲に、絶妙な緩急をつけている。押すところはドーンと押し出し、引くところはスッと引く。この潔い押し引きに、コブクロというアーティストのポップスセンスを感じると同時に、1曲まるまるしっかり聴かせようとするこだわりと意地も感じる。
そんな彼らの意地を多彩な形で堪能できたのが、昨年12月にリリースされたアルバム『One Song From Two Hearts』である。オリジナルアルバムとしては4年4カ月ぶりとなった本作には、「紙飛行機」など、既発のシングル6曲を含む15曲が収録されている。
この最新アルバムの最後を飾る「今、咲き誇る花たちよ」がリカットされ、コブクロ、24枚目のシングルとなった。
NHKソチオリンピック・パラリンピックテーマソングとなっているこの曲。既にたくさんの人が、耳にしているのではなかろうか。
イントロからの三拍子のリズムが特徴のミディアムチューン。トラディッショナルな管楽器の音色とフレーズが印象的で、前述したリズムと相まって楽曲の個性になっている。全体的にフォルクローレ(=米国諸国の伝統音楽や民俗音楽に基礎をおいた大衆音楽の総称)を彷彿させる哀愁ある1曲ながら、メロディーはドメスティック。サビで言葉のテンポを変えるなど遊び心もあるが、基本は、言葉をはっきり聴かせるために、シンプルな譜割りに終始しているあたりは、本当に見事な仕上がりだと思う。
この春から待望の全国ツアーがスタートするコブクロ。5月17日、広島グリーンアリーナからスタートし、全国のアリーナクラスの会場で14公演を行うことが決定している。
【文:伊藤亜希】