レビュー
でんぱ組.inc | 2014.03.12
最先端の電子機器が大量に販売されている世界有数の超ハイテク地帯であると同時に、路地裏に入ればメイド喫茶の店員がビラを配り、アニメグッズのショップが軒を連ね、そんな狭間に超高級オーディオショップが点在し、素人には用途不明の電子パーツが溢れ返り、ケバブ屋の店先からふと見上げればネオンサインの光が雑居ビルの屋上でギラギラ輝いている……そんな異質なものが平然と混在している街・秋葉原のミステリアスな風景を何処かイメージさせる「サクラあっぱれーしょん」。この曲からは秋葉原を拠点にしているでんぱ組.incのアイデンティティ、プライド、世界中に向けて名乗りを上げようとする熱い心意気も感じる。
カラフルなデジタルサウンド、和風の旋律、ダンス衝動を猛烈に加速する軽快なビートに彩られたメンバーたちの明るい歌声は、夢見心地のワクワクを誘って止まない。全篇が頭のネジを完全にぶっ飛ばしながら歌って踊り、思いっきり憂さを晴らせる刺激の連続。幕末の動乱期に庶民たちは「ええじゃないか」を歌い踊りながら世直しを訴え、憂さを晴らしていたそうだが、そんな雰囲気にも通じるハジケたダンスチューンだ。
そして、カップリングのインパクトも大きい。全タイプのCDに収録されている「ファンシーほっぺ♡ウ・フ・フ」は、ドリーミーなサウンドとキュートな歌声が柔らかに広がるポップナンバー。作詞はかせきさいだぁ、作曲はカジヒデキ。耳の肥えた音楽ファンも「えっ? マジ!?」と驚くはずの2人がタッグを組んでいる。また、初回限定盤B(全6タイプ)に収録される各メンバーのソロ曲もすごい。王道のアニソン風味、乙女チックなムードを振り撒くエレクトロポップ、パワフルなパンクチューンなどなど、多彩なサウンドを鳴り響かせている。楽曲提供したのはChara、RONZI(BRAHMAN)、NAOTO(ORANGE RANGE)、清竜人など、超豪華なアーティストたち。全曲が各メンバーのキャラクターを絶妙に引き出ししつつ、オリジナリティに溢れるサウンドを発揮している。
あらゆる音楽ジャンルを大胆に呑み込んだ超絶ミクスチャーと化している現在の女性アイドルミュージック。今作はそのスリリングな状況も改めて実感させてくれる。でんぱ組.incは、5月6日に初の日本武道館公演を行う。その先も刺激的な活動を展開していくのだろう。今後への期待も大いに膨らむシングルだ。
【文:田中大】