レビュー
DREAMS COME TRUE | 2014.03.28
DREAMS COME TRUE
『AGAIN』
“最強の笑顔”のリアリティ
デビュー25周年を迎えるドリカムのニューシングル『AGAIN』は、日本テレビのニュース番組『NEWS ZERO』のテーマソングだ。
まささん=中村正人は、とにかく世の中の動きをよく知っている。僕は何度かインタビューさせてもらったが、いつも話題の豊富さに感嘆してきた。今回は番組プロデューサーから「ドリカムの音楽が持つ力で“地球を小さく”して欲しい」というオーダーがあったという。そして書き下ろされた「AGAIN」を聴いていると、まささんはたぶんその依頼を“ニュースを身近に感じて欲しい”と受け取ったのではないか、特にサビの始まりにそう感じるところがあった。
「AGAIN」のサビは♪もう一度♪という言葉で始まる。この“もう一度”という言葉は、捉え方によっては“後悔”に感じられることがある。だがドリカムの♪もう一度♪は、力強い“フラッシュバック”に聴こえるのだ。たとえばスポーツの敗者が見せる爽快な笑顔が見えてくる。そう、この♪もう一度♪は、その人がいちばん頑張った姿を見ていた“身近な人”だけが言えるセリフなのだ。
そうしてこのセリフを乗せるメロディは、ちょっと不思議な優しさをたたえている。音楽の専門用語でいえば、“メジャーセブンス”という コードが当てられているのだが、このコードは柔らかい響きを持っていて、誰かを励ます歌のサビの頭にはあまり使われない。しかし、それをあえて使うところが、さすがドリカム。後悔も含みながら、優しく背中を押すニュアンスが滲み出ている。
ドリカムは、本当に人の心がわかるアーティストだ。若いバンドなら、ストレートな“パワーコード”を使いたくなる場面で、あえてメジャーセブンスを持ってきた。ちょっと何かが足りなかったりする気分を表わす不協和音を使って、後悔を優しさに変換している。結果、少し迷いながら踏み出す一歩は、目標よりもやや後ろに着地し、やがて足は正しい位置を踏みしめるというイメージを、メロディで掻き立ててくれるのだ。音楽のメッセージとは、こうあるべきだろう。それは“最強の笑顔”のリアリティを、しっかり裏付けていて頼もしい。
さて、ドリカムの25周年はどんな1年になるのだろう。「AGAIN」を聴きながら、彼らのいろんなフラッシュバックを楽しみながら待っているとしよう。
【文・平山雄一】