レビュー
宇宙人 | 2014.04.23
宇宙人が2ndシングル『じじい』がリリース――という文章を書いただけで、かなりのインパクトだが、これはリアルにバンド名と作品名なのだ。 念のため、彼らについて少しだけ説明しておこう。宇宙人とは、しのさきあさこ(Vo)、こまつけんた(G)、にいやひでひろ(B)、わだまこと (Dr)の4人からなるポップバンド。ノスタルジックなメロディーと、童謡の持つ非日常さをたたえたサウンド、そして、ボーカル・しのさきあさこ の童女のような歌声と摩訶不思議な歌詞で、どこか中毒性のあるバンドだ。昨年リリースした1stシングル「惡の華」が、同名のアニメ『惡の華』の OP曲として話題を呼んだので、気になった人もいたのでは?
話題を「じじい」に戻そう。実はこのシングル、何と3部作で、しかも各曲が完全に違うベクトルで表現されている。まず1曲目の「じじい‐導かれ し宇宙(コスモ)‐」は、“じじい(=祖父)”との思い出を歌った童謡風ポップス。2曲目が“じじい”との別れを歌い上げた「じじい‐おわりのはじまり‐」。泣きのメロディーは切なさ全開だ。さらに“じじい”と未知の世界で再会する(!?)というユニークな発想の「じじい‐そして伝説へ ‐」へと続く。この曲にはゲストボーカルとして『アルプスの少女ハイジ』のアルムおんじや『ドラゴンボール』の亀仙人の声優でおなじみの佐藤正治 氏が参加。ミュージカル調で、愉快なあの世が描かれている。どの曲もクセはあるが、クセになるから不思議だ。
なぜ、ここまで壮大な作品になったのか。そこには宇宙人らしいメッセージが込められていた。
「天国でおじいちゃんは、死神や天使と楽しく暮らすんです。死は誰にも訪れるけど、決して怖くない、今を精いっぱい生きてパラダイスに変えようっ て伝えたかったんです」(しのさきあさこ)
実に深い。さらに、ジャケットには宇宙人とは切っても切れないUFOディレクター、矢追純一氏が登場するという徹底ぶり。やはり、あらゆる角度から興味のツボをついてくる。もちろん、聴くか聴かないかは、アナタ次第……。
【文:海江敦士】