レビュー
ゴスペラーズ | 2014.07.09
ゴスペラーズ 「SING!!!!!」
画期的な編集感覚アニバーサリー・シングル
No.20で 取り上げた椎名林檎のセルフカバーアルバム『逆輸入』で大活躍したヒャダインが、またしてもゴスペラーズのニューシングルに見事なヒビを入れてくれた。
「SING!!!!!」は作詞作曲編曲のすべてをヒャダインが担当。20周年を迎えたゴスペラーズの歴史を、ぎゅっと圧縮した高スペックのポップチューンになっている。その狙いの斬新さには、鳥肌が立つ。
もともとヒャダインはアカペラ・サークル出身で、ゴスペラーズをリスペクトしていた。なのでゴスの多彩なコーラスワークを、単なるファン以上に分析・研究していたと思われる。
「SING!!!!!」のオープニングは9thのハーモニーが響く。これは後のサビの予告編になっていて、まずは小手調べといったところ。
その後、ヒューマンビートボックス、5人の歌い継ぎ、ベルトーン(和音を一人一音ずつ歌ってハモる)、字ハモ(歌詞付きのメロディでハモる)、ドゥワップ・スタイルなど、ゴスペラーズが長年築き上げてきたテクニックが次々と繰り出される。これはゴスのすべてを知り抜いた作詞家、作曲家、編曲家が揃わないと実現不可能。まさにヒャダインならではのアラワザだ。さらには、あらかじめこのパートは誰が歌うのかヒャダインが指定したようで、実際にメンバーが歌ってみて修整した部分もあったという。
つまりヒャダインは、憧れの5人を使って“自分だけのゴスペラーズ・ナンバー”を作り上げたのだ。その際、ヒャダインが優れているのは、歴代の曲やハモりテクをメドレーのように“繋ぐ”のではなく、複数のストーリーが同時に展開するように“編集”していることだ。だからゴスの歴史とストロング・ポイントが1曲の中でカタマリになって怒涛のように押し寄せ、リスナーの耳の中で解凍されていく快感がある。これってまるで、ジグゾーパズルの“ヒビ”みたいだぜ。
こんなに楽しくてスリリングなアニバーサリー・シングルは前代未聞。メンバーにもファンにも嬉しいシングルになった。聴いていると、ゴスの20年間が走馬灯のようによぎる…“走馬灯”って、死ぬ間際じゃないんだから(失礼&笑)。
ちなみにタイトルの「!!!!!」って何? とメンバーに聞いてみると、「ヒャダインに直接質問したわけじゃないけど、うちらの5本マイクでしょ!」との答。このコラボ、いちいちカッコいいワ!
【文・平山雄一】