レビュー
tricot | 2014.08.13
tricot「Break」
ヤマアラシのジレンマ
喉に引っ掛かった魚の骨のように、妙にチクチク気になるバンドtricot。3月にドラムの黒一点、komaki♂ が脱退して心配してたら、6月のスペースシャワー列伝にアコースティック・セット“期待外れにもほどGIRL”として元気に出演して、笑かしてくれた。
そして待望のニューシングル「Break」は、誰かと訣別して新しいスタートを切る決意の歌。どうしてもメンバー脱退劇と重ねたくなるが、そんなことを意識しなくても得意の変拍子と美メロのマッチングで楽しませてくれる。
そんなお騒がせバンドなのに、カップリングの「after school」が泣かせるんだよなぁ。これもまた別れの歌ではあるのだが、「Break」とはまったく違う耳触り。ストレートなロックビートで、切なく迫ってくる。相手のことをすべてわかって別れたはずなのに、♪でも今になって何もかもわからないの♪と告白する。
tricotは、言いたいことをはっきり言う強気バンドの印象がある。だからこそ、「after school」のこの正直さ加減がザックリ突き刺さる。魚の骨どころではない。これはもう、ヤマアラシの針だ。
そういえば“ヤマアラシのジレンマ”という寓話がある。仲良くしたくてくっつくと、お互いを傷つけてしまうヤマアラシ。だが接近を繰り返すうち、やがて温もりを感じつつ、傷つかない距離を発見するという話だ。tricotの音楽との付き合い方、あるいはメンバー間の関係は、もしかしたらこの寓話のようなものかもしれない。正直さが原因のヒビは、正直に解決するのがいちばんなのだ。
そしてtricotは、DETROITSEVENの山口美代子がサポートドラマーの候補に加わった。最強のヤマアラシ・ギャルバン、期待してるぜ!
【文:平山雄一】
リリース情報
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Break (期間限定生産盤)
発売日: 2014年08月06日
価格: ¥ 463(本体)+税
レーベル: BAKURETSU RECORDS
収録曲
1. Break
2. after school