レビュー
JMS | 2014.11.13
11月リリースの新譜の中から、おすすめの3アーティストをご紹介。動画コメントやミュージックビデオも、合わせてチェックしてください!
ボーカルの声がいい。一筋縄ではいかないリズミカルなメロディと、迷いのないダイナミックなバンドサウンドが心地好い。個人的には一瞬KEYTALKやWHITE ASH、KANA-BOONあたりも連想したけれど、それは撤回。NUMBER VOGEL(ナンバーフォーゲル)は〇〇っぽいという形容詞は似合わないバンドだ。なんたって予測不能の展開に振り回されっぱなしなんだもの。メンバーは、もとつね番ちょう(Vo・G)、タンパク(G)、ムッシュ(B)、小平雄希(Dr)という4人。作曲はもとつねと小平のふたりが、作詞は小平が主に担当する。すでに「見放題」では2年連続で入場規制となっている大注目の彼ら。新作ep『かくかくしかじか』は、全曲がライブハウスへの片道切符となる中毒性の高いロックアルバムだ。ムッシュが弾くゴリゴリのベースは聴きどころのひとつ。そのからっとした響きとは裏腹に、歌詞では、個人の価値観が揺らぎがちな現代社会にドロップキックを入れる辛辣な一面もある。というわけで、“かくかくしかじか”……説明は省略!まずは音で体感してほしい。タイトルにはそんな意味が込められているのかな。
BARICANGと書いてバリカンと読む。毛を剃るアレをなぜバンド名にしたのかが気になるところだが、そのサウンドは正攻法なギターロック。今年、大阪で開催されたライブサーキット「見放題」では入場規制がかかった超注目の4人組だ。精力的なライブ活動を続けながらも、全国流通版としては5年ぶり。そんな今回のミニアルバム『溶ケテ合ワサリヒトツト成ル』は、とても丁寧な音づくりのポップ/ロックアルバムとなった。フロントマン・ノホリサチオ(Vo)が歌詞のテーマに置くのは、目には見えない尊いものの在り処。たとえば、ふたりだけの大切な時間、未練たっぷりの情けない心、建前で塗り固めた人間関係。それらをユニークな言葉選びですくい取る。顔の見えない批評家たちを皮肉った、《目には目をあげる因果さんの応報です》(「いないいないばぁ」)なんて可愛らしく言っても、毒は毒だ。踊れるロックからダイナミックなバラードまで、グッドメロディ&日本語詞を武器とするバンドはもはや平凡と割り切られる時代だが、BARICANGがそこで支持される理由は確かにある。5年ぶりにしてバンドの魅力を7曲に凝縮した戦略は只者ではない。
福岡県久留米市在住の4人組バンドKARIBUxNOxKAIZOKU(カリブの海賊)が“THE FOREVER YOUNG”に改名してリリースする3枚目のアルバム『THE FOREVER YOUNG』。その叫びはこの嘘で塗り固められた世界で、みっともなく足掻き生きる切実なものだった。これまでのハードコア路線から、メロディと歌詞を大切にしたメロコア路線に比重を移した今作。ソングライティングを手がけるクニタケヒロキ(Vo)はまるで“一生青春で何が悪い?”とでも言うように、いつだってキミに全力投球なボクの歌を描く。そこにはツービートがよく似合う。耳をひいたのは7曲目以降の新曲群。デスメタルっぽいアプローチで残虐な妄想にふける「悪魔街のアリス」から、若き日の疑問を叩きつけた葛藤のパンク「普通ってなんだよ」、未来に裏切られた孤独をドラマチックなロックにのせた「ANSWER」や「TO LIGHT」。今作では、前半に過去曲も入っているが、この新曲群にバンドの進化がよく表れていて良かった。ラストを片思いのクリスマスソング「君の魔法」で締めくくるあたり、こいつら相当なロマンチック野郎だ。
THE FOREVER YOUNG -HELLO GOODBYE-【Official Video】
【文:秦 理絵】