レビュー
Czecho No Republic | 2015.02.13
「いま(バンドの)人数を増やしたいんですよね」。これは、前作シングル『Oh Yeah!!!!!!!』の取材のときに、武井優心(Vo・B)が口にした言葉だったが、要するに、それはCzecho No Republicに「楽器」の数を増やしたい、という意味だった。あれから、4ヵ月。「For You」は、武井のそんな欲求が早くもが実現した1曲だ。
楽曲全編を通じて聴こえてくる爽快なホーンのフレーズは、あだち麗三郎(Sax)と三浦千明(Tp)を迎えてレコーディングされたもの。その高らかな響きはチェコのサウンドを一段とにぎやかに彩っている。シングルで初めてメインボーカルをとったタカハシマイ(Cho・Key)の伸びやかな歌は、《For You... Yeah》と繰り返すサビのフレーズを、その度ごとに微妙に声色を変えるきめの細かさ。武井とのデュエット部分ではその声が優しく弾む。《君といたいんだ》《年を取ろうよ 二人だけで》という歌詞からは、幸せいっぱいの未来を予感させる……が、最後は《君といたかった》で締めくくる、悲しいオチだった。そこで、この曲は二度と会えない人を想った歌だと気づく。湿っぽさはゼロのまま、永遠の別れをカラリと表現する。これぞ武井の油断ならないソングライティングだ。それを知って、もう一度プレイボタンを押すと、一度目とは違うリスニング体験ができるはず。
カップリングには、セックス・ピストルズの「ANORCHY IN THE U.K.」をカバー収録。オリジナルは1976年。シンセサイザーを大胆にフィーチャーしたそれは、なんだか足踏みしながら聴きたくなるようなウキウキするサウンドに生まれ変わっていた。
最後に、見逃せないのが初回盤に付属のDVDに収録されてる、昨年の「MANTLE TOUR ~2014年宇宙の旅~」の赤坂ブリッツ公演のライブ映像。すべての鬱な気分を忘れさせてくれるようなハッピーな演奏で会場を笑顔で満たしながら、カメラが間近に捉えた5人の表情は真剣そのもの。会場では余裕綽々でその場所にいるように見えたけれど、改めて映像で見るとバンド史上最大キャパに挑むバンドの微妙な緊張感が伝わってくる感じがした。それが、とても良い表情なのだ。
【文:秦 理絵】