レビュー
椎名林檎 | 2015.02.25
椎名林檎「至上の人生」
椎名林檎は“過剰なドラマ”に
“過剰な歌”で共振する
昨年のシングル「NIPPON」はスピーディなロックだったが、アルバム『日出処』をはさんだ新曲「至上の人生」(日本テレビ系 新水曜ドラマ『○○妻』主題歌)は、超へヴィーなミディアム・ロックで、林檎のエネルギッシュなボーカル・パフォーマンスに圧倒される。特に2コーラス目の“ウッ、ウッ”という吐息のような歌声は、“過剰好き”な林檎リスナーにはたまらない演出だろう。加えてギター名越由貴夫、ベース山口寛雄、ドラムス玉田豊夢、シンセサイザー、ヒイズミマサユ機という強力なメンツが、いつイエローカードが出てもおかしくない過激なサウンドで林檎の歌をバックアップしている。
カップリングの「どん底まで」もまた、バイオレンスなロック・ブギー。たった2曲でそれこそ“至上”から“どん底”までを、過剰なまでに描ききっている。
そしてふと、この過剰さを過去に経験したことがあると思った。そう、1993年、♪骨まで溶けるような♪というベタな歌詞で一斉を風靡した 松任谷由実の「真夏の夜の夢」(TBS系ドラマ『誰にも言えない』主題歌)と、サザン得意のセクシャルソング「エロティカ・セブン」(フジテレビ系ドラマ『悪魔のKISS』主題歌)が、なんと同じクール(7~9月)で激突。どちらもミリオンセラーを記録したのだった。僕はあの“過剰な夏”を、林檎のニューシングルの2曲を聴いて思い出していた。
テレビドラマの主題歌は、ストーリーとリンクしながら視聴者の心に沁み込んでいく。特に“過剰なストーリー”には、“過剰な歌”がよく似合う。それをよく心得ている林檎は、結果的にユーミンやサザンの取った方法論に通じる作品作りをしたのかもしれない。
それにしても、“至上”と“どん底”を一人で作っちゃうのは、さすがに林檎だね。
そうして、今のクールで『○○妻』と激突しているドラマは何だろうと見渡してみると・・・
ありゃ、『残念な夫。』(フジテレビ系ドラマ)のユニコーン「はいYES!」かな?(笑)。
過剰な春、楽しみましょっ!
【文:平山雄一】