レビュー
MISIA | 2015.07.08
MISIA「流れ星」
MISIAの歌う「流れ星」の真実は、一つしかない。しかしその姿は多様だ。そして多様だから美しい。
真実が一つしかないのなら、こんなにたくさんの歌は生まれ ない。最近のMISIAを見ていると、そんな想いが湧いてくる。MISIAは、いろいろな形をとって顕われる真実を、そのたびに丁寧に拾い上げ、描いていく。この「流れ星」もその一つだ。
♪君は知らない♪という冒頭の呼びかけは、この世のいるすべての“君”に向けられている。70億人の君に向けて、MISIAは歌い始める。君の美しさや素晴らしさは、それぞれの君にあり、それを信じて大切にと告げる。「流れ星」は、そういう歌だ。
この歌を僕は5月の国際フォーラムで初めて聴いた。アンコールの最後の曲だった。そんな大事な場面で新曲を歌うMISIAに、アーティストとしての真摯さを感じた。いい歌に巡り会ったらすぐに聴かせたいという、アーティストとして最も素直な気持ちを、MISIAは自然のこととして実行していた。だから、こうしてようやく音源として聴くこと ができるようになったことを、素直に喜びたい。
ピアノだけをバックに歌は始まり、サビから服部隆之の手になるストリングスが歌を彩る。ストリングスは中域を中心に構成されていて、落ち着いた美しさがある。MISIAは「話しかけるよう歌うことを心がけました」と語っている。そのタッチを最大限に活かす服部のストリングス・アレンジだ。
また、同時配信される「流れ星(Hoshizora ver.)」は、現在進行中のツアー“星空のライヴVIII MOON JOURNEY”のバンドメンバーによるテイクで、MISIAは 心のままにメロディをフェイクしたりして楽しんで歌っている。
つまり、この二つのバージョンは同じ歌なのに、姿が違っている。ざっくり言ってしまえば、「流れ星」は静かに語りかけるように、「流れ星(Hoshizora ver.)」は楽しく語り合うように歌われている。
真実は一つしかない。しかし、その姿は多様だ。そして多様だから美しい。僕はこの2バージョンを聴いて、そんなMISIAの“もう一つのメッセージ”が込められているような気がしたのだった。
【文:平山雄一】