レビュー

KANA-BOON | 2016.01.20

連載 第105週
KANA-BOON「ランアンドラン」


「ランアンドラン」は旅立つ者たちの背中を、
音楽で真っ直ぐに押す


 聴いた途端、僕はあるライブを思い出していた。昨年、3月にZepp TOKYOで行なわれた“酔杯フォーエバー”で、アジカンは新曲「Easter/復活祭」をお披露目した。アメリカのフー・ファイターズのスタジオでレコー ディングされたエモーショナルなこの曲に、観に来ていたKANA-BOONのメンバーが「カッコいい!!」と言って目を輝かせたのを僕は見逃さなかった(連載 第72週を参照)。

 「ランアンドラン」のイントロで、透き通ったギターのバックでタイトな8ビートを刻む小泉・コイちゃん・貴裕のドラムがずんずん耳に入ってく る。このワクワクする感じ。そうだ! あの時のメンバーの瞳の輝きと同じワクワク感だ。

 そしてKANA-BOONは、このライブで感じたことを、そのまま音楽にしてしまった。彼らのニューシングル「ランアンドラン」を聴いたとき、僕はそんな思いにとらわれた。「ランアンドラン」と「Easter/復活祭」は、まったく似ていない。だが、僕の中ではしっかり繋がっている。

 KANA-BOONがアジカンをリスペクトしていることは、よく知られている。しかしKANA-BOONは、アジカンの真似をしようとはしない。そのロック・スピリットに肉薄しようとする。ミニ組曲風の構成が、バンドの意気込みを如実に表わしている。

 「ランアンドラン」は旅立つ者たちの背中を、音楽で真っ直ぐに押す歌だ。対して「Easter/復活祭」は、墓場のような街で生きる者たちを、告発するフリをして、逆説的に励ます歌だ。正反対のシチュエーションを使って、どちらもリスナーに最大限のエールを贈る。音楽シーンにおいて、こんなにも先輩と後輩の潔くて美しい関係は滅多にない。KANA-BOONは2016年もランアンドラン=走りに走るつもりだ。

 カップリングのザラついたロック「I don’t care」も聞き逃すな!

【文:平山雄一】

リリース情報

ランアンドラン

ランアンドラン

発売日: 2016年01月20日

価格: ¥ 926(本体)+税

レーベル: Ki/oon Music

収録曲

1. ランアンドラン
2. I don’t care

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