レビュー
モン吉 | 2016.03.07
FUNKY MONKEY BABYSがメジャーデビュー10周年を迎えた1月25日、ついにモン吉が活動再開を発表。ファンモンの解散ライヴとなった2013年6月2日以来、長期休養に入っていた彼がソロデビュー配信シングル「桜ユラユラ」をリリースするという知らせは、ファンを大喜びさせていた。そして届けられたこの曲、実に彼らしい仕上がりだ。約2年8ヶ月も休んでいたことから窺われる通り、モン吉はマイペースな自由人。しかし、音楽に対する情熱は常に燃え盛らせながら歩んできた。「桜ユラユラ」は、そんな姿をありのままに伝えてくれる。
描かれているのは、かつて共に夢を語り合った友への想い。未来に対する不安を分かち合って過ごしていた仲間達も、誰もがやがては各々の選んだ道へと進んで行かざるを得ない。切ない青春の岐路を、この曲は揺らめく桜の花びらをモチーフとして浮き彫りにする。モン吉の場合、飛び込んだのは言うまでもなく音楽の道。その一歩を踏み出す際に抱いていた想いをさり気なく“ちっぽけな勇気”と表現しているのが印象的だ。ファンモンを結成して「ちっぽけな勇気」や「Lovin’ Life」や「あとひとつ」など、ファンの心に深く刻まれるナンバーをファンキー加藤、DJケミカルと一緒に届け続けたモン吉。そんな日々を経ても今尚、彼の心の奥で美しく輝いている思い出の場所、かけがえのない日々……そういうものを自ずとイメージさせてくれる。
そして、程よく残響を利かせたドリーミーなサウンド、ノスタルジーを誘う柔らかなメロディ、《桜ユラユラ》という言葉を効果的に活かしたアレンジも大きな聴きどころだ。複数の《桜ユラユラ》が重なり合って明滅する終盤は、もう決して戻ることの出来ない日々の風景がフラッシュバックするかのような不思議な感覚を噛み締めさせてくれる。モン吉の実体験に基づいた曲なのだと思うが、聴き入る内にリスナー各々が胸の奥にしまっている思い出も蘇るのではないだろうか。
こうして動き始めたモン吉のソロ活動。休養期間中に体験した無数の事柄、巡らせていた様々な考えは、魅力的な音楽としてさらに開花しようとしているのだと思う。今後の彼の動きに期待しつつ、「桜ユラユラ」をじっくりと味わうとしよう。
【文:田中 大】
リリース情報
桜ユラユラ(配信シングル)
発売日: 2016年03月09日
価格: ¥ 250(本体)+税
レーベル: ドリーミュージック
収録曲
1. 桜ユラユラ