レビュー
Official髭男dism | 2016.06.15
島根県出身、Vocal&Keyboard、Guitar、Bass、Drumsの4人組。今年の冬の終わり、上京したばかりのバンドだ。この春、渋谷TAKE OFF7で開催されたショーケースライブのMCで “上京”に触れた際、ボーカルの藤原は、そのMCをこう締め括った。
「こんなにたくさん集まってくれると思いませんでした。ありがとうございます。音楽を聴いて楽しくなったり、助けられたり。僕もずっと音楽にそうしてもらってきました。だから僕も音楽の力を信じたいと思いました」
彼らの名前はOfficial髭男dism。セカンドミニアルバム『MAN IN THE MIRROR』を6月15日にリリースした。
ブラックミュージックにルーツを持ち、横ノリのグルーヴを得意とするポップ・バンド。グループ名の“髭”や“ダンディズム”とは、ちょっとイメージが違うサウンドを放つが、自分の音楽を信じ、貫きとおす。自分の夢にかける“男のロマン”こそ、彼らのダンディズムと言えるのではなかろうか。
全曲の作詞曲を手掛けるボーカルの藤原は、スティーヴィー・ワンダーやマーヴィン・ゲイを彷彿させる歌い回しもありながら、メロディーはかなりドメスティック。70年代のニューミュージックを感じるグッドメロディーをバンドでパワフルに再現するのが魅力&個性だが、ちょい変わった、フックになるフレーズもチラリ。メンバー全員が、存分に音楽を楽しんでいる様が、サウンドにキラキラ乱反射しているようだ。
音源も歌詞にメロにキュンとする曲ばかりだが、別の顔を見せるライヴも秀逸。藤原がソウルフルな歌い回しも見せるところも含め、ダイナミックなパフォーマンスはどこかパンキッシュ(パブロック的とも言える)で、自分たちで曲を書き始めた頃のチェッカーズ(知らない人は検索しよう!もしくはお父さんお母さんに聞こう!)と重なるものがある。
アップチューン、ミディアム、バラードと、どの曲も堂々としたもので、新作『完成形が見えている感もあるが、メンバーの雑多なルーツ、そして藤原の表情豊かなボーカルは、こちらの想像する“完成形”を軽く越えていくだろう。そんな風に思わせる“曲の底力”を感じる逸品だ。
【文:伊藤亜希】