レビュー
Bentham | 2016.07.06
Bentham「ExP」
さあ、「ExP」の中から自分の好きなBenthamを探してみよう!
「ExP」に収録されている7曲すべて、音楽的アプローチのテイストが違うのに驚いた。それも力技ではなく、「やりたいことをやったら、こうなりました」的な自然にあふれ出している感じがいい。ってか、「Benthamはやりたいことが、たくさんあるんです」ってことだよね。
これまで3枚のEPを出してきたBenthamだが、これほど均整の取れた作品作りは初めてだろう。ストレートなポップから、少しひねった浮遊感サウンドまで、通して聴いて飽きさせない。それを可能にした秘密の一つは、ソングライター陣の充実だ。
1曲目の「サテライト」は、リズムもメロディも2016年版J-ROCKのスタンダード仕様で、作曲はギタリストの須田原生。ポストロック風の「恋は白黒」は、詞曲ともボーカルの小関竜矢。ハードな「KIDS」の作曲は小関とドラムの鈴木敬の共作。繊細なアンサンブルが印象的な「AROUND」の作曲は、小関とベースの辻怜次の共作。ポップなパンクビートの「カーニバル」は、ギタリストの須田が作詞作曲をしている(この曲以外の作詞はすべて小関)。ラストの「fine.」の作曲は須田が担当。このバリエーションに富んだソングライティングが、そのまま曲の多様さを生んでいるわけだ。
メンバー全員が曲を作ることを奨励しているバンドは多い。だが、いざアルバム作りに向かって“曲出し”をすると、誰か一人の曲に片寄って選ばれてしまうことがよくある。結果、バリエーションが減ってしまうのだ。その意味で言うと、Benthamのメンバーの作曲能力が、奇跡のバランスで競い合っていると言える。
そして次はリスナーが、これらの中から好きな曲を選べるのがいい。僕は「AROUND」が好き。どの時代のロックにもあった太いビートでグイグイ迫ってくる。なのに♪ding-dong ding-dong♪と楽しい語感の歌詞が混ぜられていて、ポップな聴き心地がかえって切なくて気持ちいい。それはもしかすると、僕がベーシストの作った曲が好きなせいかもしれないけれど、バリエーションがあればこその選択の楽しさがここにある。
きっとBenthamのレコーディングは、「ああしよう」「こうしよう」というメンバー間の意見がぶつかりあって楽しいものなのだろう。さあ、自分の好きなBenthamを探してみよう!
【文:平山雄一】
リリース情報
ExP
発売日: 2016年07月06日
価格: ¥ 1,800(本体)+税
レーベル: KOGA RECORDS
収録曲
1. サテライト
2. 恋は白黒
3. 僕から君へ
4. KIDS
5. AROUND
6. カーニバル
7. fine.