レビュー
キュウソネコカミ | 2016.08.02
破竹の勢いで進み続けてきたキュウソネコカミが放つ2ndシングル。10か月ぶりのリリースであり、ネクスト・ステージへと向かうタイミングで彼らが生み出した楽曲が『サギグラファー』……もう、このタイトルだけで花マルをあげたい。気負ってない! 気取ってない!瞬発的に踊れそうなグルーヴィなトラックには、気鋭のバンドならではと思わせられるが、歌っている内容は、《カッコつけて撮られたつもり だけどなぜかいつも笑われる》、《フォトグラファー 俺に魔法をかけてくれ》という、写真うつりへの嘆きだ。その思いは徐々にヒートアップし、《フラッシュで殺してくれ》という絶唱にまで至る。そんな思い、今をときめくバンドなんだから、胸のうちに閉まっておけよ! しかも大事なタイミングのシングルの表題曲で、そんなちっちゃい思いを歌うなよ! と突っ込みたくなる。まあ、彼らにとっては大真面目なのかもしれないけれど。それに、中途半端にシリアスなことを歌われるよりは、こういった等身大のことの方が、クスッと笑えるし、自分たち自身に重ね合わせられる。もっと言うとこのシングル、カップリングの『夏っぽいことしたい』も『辛あわせ』も笑えるのだ。いや、どれも彼らにとっては大真面目なのかもしれないけれど……。
でも、こうやって三枚目な自分たちを思いっきりさらけ出してエンターテインメントしているバンドって、なかなかいないと思うのだ。はじめから器用に自己プロデュースしていたり、デビューして早々に壮大なテーマに向き合ったり、クレバーなロックバンドが本当に増えたなあと思う今日この頃。でも、彼らはそうではない……わけではなく、きっと、そう見せない。特にこの時季は「夏フェス」を思いっきり意識した楽曲が生まれがちだが、今作からはそういった作為も聴こえてこないのだ。
これからも、必要以上にカッコよくなることなく、肩肘張ったようにでっかくなることなく、情けなさも面白味も引き連れて、メインストリームの階段をのぼっていって欲しい。そう改めて思わずにはいられない一枚。頭からっぽにして楽しむことも出来るし、掘り下げて彼らや自分自身の闇と向き合うことも出来る、この自由な振れ幅で、もっともっと多くのリスナーを獲得していくに違いない。
【文:高橋美穂】
リリース情報
サギグラファー
発売日: 2016年08月03日
価格: ¥ 1,000(本体)+税
レーベル: ビクターエンタテインメント
収録曲
1.サギグラファー
2.夏っぽいことしたい
3.辛あわせ ★グリコビーフカレー「LEE」CMソング