レビュー
エレファントカシマシ | 2016.08.03
エレファントカシマシ
「夢を追う旅人」
旅人の目標は、“どでかい明日”で決まり!!
宮本浩次は今年50歳になった。話題のイベント“ROOTS 66”の大阪公演にゲストという形で出演したのも記憶に新しい。だからというわけではないが、ニューシングル「夢を追う旅人」を聴いていると、区切りの年齢を迎えた宮本の心境が重なって響いてくる。
「夢を追う旅人」は、青春の回顧がテーマのひとつになっている。♪嗚呼 時は流れ大人になった昔の少年♪というAメロのフレーズが歌の主人公の姿なのである。そして歌の中で重要なのは、中盤のパートで、宮本は♪思い出時にふと自分がいぢらしく愛おしくて涙ホロリ♪と歌う。その後でさらに♪でも さあ POWERチャージして もう一度出かけよう♪と旅立ちをうながすのだった。
曲調は、オーソドックスな“歌ものロック”で、エレカシの得意とするところだ。宮本はあちこちで“声の芝居”をする。励ますように、あるいは切なさを掻きたてるように歌う。その演出が嫌味にならないのは、宮本自身が50歳の男だからだろう。
昨年は奥田民生をはじめ、1965生まれのアーティストが50歳を迎え、今年は宮本をはじめ、ザ・イエロー・モンキーの吉井和哉やウルフルズのトータス松本、ORIGINAL LOVEの田島貴男などが50歳を迎えた。彼らはとにかく元気なのである。まだまだ新しいことにチャレンジするエネルギーを持っている。
青春のスタートダッシュの後も人生は続く。人は何度か新しい旅に出る。宮本はそうした時期を迎えた人に、この歌を贈っているように聴こえる。そして、その旅の目標を“どでかい明日”に定めているところが、なんとも宮本らしい。
一方、カップリングの「i am hungry」はワイルドなブギーのリズムでぶっ飛ばす。演奏が素晴らしく、ドライブ感たっぷりのロックが楽しめる。そしてこちらもキーワードは“どでかい明日”だ。♪i am hungryアンドangry いはば 心が叫ぶのさ♪というフレーズに、宮本の心意気がにじみ出る。
アーティストばかりでなく、世の中の50歳全般もまだまだ走る気充分だ。しかしPOWERをチャージしたり、背中をひと押ししてもらいたいとも思っている。宮本はそんな仲間に優しい。50歳に限らず、何度目かの旅立ちを決意した人を応援するエレカシのニューシングルだ。
【文:平山雄一】
リリース情報
夢を追う旅人
発売日: 2016年06月24日
価格: ¥ 1,100(本体)+税
レーベル: ユニバーサル シグマ
収録曲
1. 夢を追う旅人
2. i am hungry
3. 夢を追う旅人(Instrumental)
4. i am hungry (Instrumental)