レビュー
阿部真央 | 2016.08.24
阿部真央
「女たち」
“私たち”と呼びかけて、女性ファンをワシづかみにするエネルギッシュなシングル
あっという間の3分45秒だ。言いたいことは、たった一つ。♪こらえた涙の理由も全部笑い飛ばしてやるの 私たち♪というフレーズだ。
阿部真央には女性ファンが多い。思い切りのいい歌い方。一人ですっくと立つたたずまい。ふと見せる淋しい表情。あるいは、女の子のかわいらしさ。重要なのは、男に媚びない姿勢。これらが合わさって、阿部真央という“憧れの女性像”が現れる。世の女子はそこに魅かれるのだろう。だから今回、木曜ミステリー「女たちの特捜最前線」の主題歌に白羽の矢が立ったのは、出来すぎ、あ、失礼(笑)、ぴったりハマる。
ドラマは総務や広報や食堂の調理人など、捜査を後方支援する女性スタッフたちの活躍を描く。阿部自身もこのドラマのファンで、オーダーを受けてさっと書き上げた勢いが、そのまま歌詞にもメロディにも反映されている。♪あなたが好きだった私の こけても前を向くとこ 大事に育てていきたいの♪なんてフレーズは、阿部にしか書けない。そうして最も大事なのは先に揚げたフレーズの“私たち”だ。この呼びかけは、タイトルの「女たち」と同じ意味と重さを持っていて、女性ファンの気持ちをワシづかみにすることだろう。
テンポのいい詞曲を軽快に聴かせるリズムの工夫も見逃せない。“2ビート”と呼ばれるカントリー・タッチのリズムを基本として、パターンがどんどん変化していく。
Aメロのドラムは2ビートなのに、ベースが目まぐるしく動き回る。Bメロは前半でリズムを倍に取り、後半は普通に戻る。途中では2ビートを基本にしたスカになったり、全拍を強調するパターンになったり。聴いていて不自然さはまったくないが、実によく練られたリズム・チェンジで飽きさせないのはさすがだ。
ラスト・コーラスでは、それまで使わなかったパワフルでスウィートな声をもって来るなど、ボーカルの演出も完璧。いやはや、あっという間の3分45秒なのである。
カップリングの「この時を幸せと呼ぼう」は、アコースティック・ギター1本の弾き語りスタイルが“プライベート”感を出している。ラブソングの形を取りながら、♪言葉も話せぬ天使かな♪というフレーズからすると、これはおそらく我が子への愛の思いの歌だと思う。
現時点での阿部真央のエネルギーのすべてを発揮したこの2曲は、もちろん男性ファンも共感できる余裕のシングルだ。
【文:平山雄一】
リリース情報
女たち
発売日: 2016年08月24日
価格: ¥ 1,000(本体)+税
レーベル: ポニーキャニオン
収録曲
01.女たち
02.この時を幸せと呼ぼう ~弾き語りVer.~
03.女たち(Inst.)