レビュー
KANA-BOON | 2017.07.07
今年のVIVA LA ROCK(5月3日)でメインステージのトリをつとめるなど、バンドとしてのスケール感を確実に向上させているKANA-BOONから「Fighter」(TVアニメ「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」)に続く、2017年第2弾シングル「バトンロード」をリリース。
テレビ東京系アニメーション「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」のオープニングテーマとしてオンエア中の表題曲「バトンロード」。“NARUTO”シリーズの世界観を受け継ぐアニメのストーリーと、様々な葛藤と苦難を乗り越えて、ロックバンドとして前進し続けるKANA-BOONのリアルな物語が重なり合うようなロックチューンに仕上がっている。
この楽曲の制作におけるもっとも大きなトピックは、ソングライターの谷口鮪(V&G)が基本となるアレンジも手がけていること。推進力と心地よい跳ね感を共存させたリズムセクション、ボーカルのメロディとエモーショナルに絡み合うギターフレーズなど、谷口のビジョンが明確に示されているのだ。谷口のイメージにしっかりと寄り添いながら、メンバー個々のプレイヤビリティを存分に活かしたサウンドメイクも魅力的。これまではゼロの状態からセッションで楽曲を作り上げてきた彼らだが、「バトンロード」によって、その表現の幅はさらに広がっていくことになりそうだ。
また「未来を君と追い抜いて」に象徴されるリリックも強いインパクトを残している。デビュー以来、まさに破竹の勢いでバンドシーンを駆け抜け、現在のポジションを手に入れた4人。20代後半になった彼らはいま、新たな理想に向かって進み始めているようだ。
2曲目には、しなやかなファンクネスを備えたサウンドがバンドの新機軸を感じさせる「アナートマン」を収録。無我を意味する仏教用語“アナートマン”をタイトルに冠したこの歌のテーマは“来世の幸せのために現在で徳を積むという考え方は欺瞞ではないか?”。宗教的な考え方を日常にフィードバックし、さまざまな思いをカットアップするようなリリックからは、谷口のソングライティングがさらに深まっていることが伝わってくる。3曲目に収められているのは、温かく、穏やかなメロディとともに「愛のある人生を/手を叩けば溢れ出す/ワンダーソング」というラインが沁みてくるナンバー。ケルトのテイストを取り入れたアレンジも新鮮だ。3曲を通し、KANA-BOONの表現の広がりがはっきりと伝わってくる充実作。現在制作中という新しいアルバムへの期待が大きく高まるシングルである。
【文:森朋之】
リリース情報
バトンロード[初回生産限定盤]
発売日: 2017年07月12日
価格: ¥ 1,500(本体)+税
レーベル: Ki/oon Music
収録曲
DISC 1
1. バトンロード
2. アナートマン
3. ワンダーソング
DISC 2
小泉貴裕初監督作品「シン・シルエット」(小泉が監督になるまでのドキュメンタリー / 「シルエット」Music Video 小泉監督編)