レビュー
THE BEAT GARDEN | 2017.07.19
「待たせたな」。
もしも筆者が彼らだったら、思いっきりキメ顔作ってそんなふうに嘯いてみたい。これが欲しかったんだろ? と見透かすように挑発的に微笑んでみたい。こんなパースの狂った妄想にどれだけ共感が得られるものか甚だ疑問だが、8ビートで不敵にドライブするロックに振り切れたこのサウンドに触れればおそらく「なるほど!」くらいには思ってもらえるかもしれない。
与太はさておき「FLOWER」である。まもなくデビュー1周年を迎えるTHE BEAT GARDENから届いた4作目のシングルにして、またも新境地を拓くエポックメイクな1曲だ。前述した通り、一聴してまず何より耳を惹くのはギターを主軸にバンドサウンドをフィーチャーしたロック全開のトラックメイク。3ボーカル+1 DJスタイルで自身が標榜する〈EDR(エレクトリック・ダンス・ロック)〉、すなわちEDMとロックを融合させた独自の音楽性を常に模索、追求してきた彼らだが、ここまで大胆に〈R〉サイドに寄せてこようとは。前作「Don’t think, feel.」のギターリフを効かせたグルーヴィーなサウンドにもかなり驚かされたが、今回はもう紛うことなきロックナンバーだと言い切ってしまってもいい。そして、このロックな要素こそがTHE BEAT GARDENを唯一無二に押し上げる強力な武器であることを「FLOWER」で改めて認識させられた。
ロックとは何かと問うたところでその答えは千差万別、聴く人、奏でる人の数だけあるだろう。それでもひとつ魅力を挙げるとするならばやはり〈人間臭さ〉ではないか。寸分の狂いなく精緻に構築されたエレクトロミュージックにも他に代え難い心地好さがあるが、機械では制御することのできない揺らぎやズレが生み出す絶妙の呼吸感、生身の温度感に宿る求心力にはどうしたって抗えない。THE BEAT GARDENの音楽に感じるのは、まさにそうした息遣いであり体温だ。例えばボーカリスト3人の個性も然り。ハリがあってアタック感の強いリーダー・Uの声、REIの低めのハスキーボイス、青年らしい硬派な声質を持ちつつも時にジェントル、時にチャーミングなニュアンスを滲ませるMASATOと三人三様だが、それぞれに異なる3つの声がひとつの歌として連なり重なると途端にTHE BEAT GARDENとしての躍動感がスリリングに匂い立つ。エネルギッシュかつ奔放自在に疾走する3人の背中を後ろで守るDJ SATORUの存在も音像を立体的にさせているに違いなく、彼らの身上とも言うべきその生々しい立体感が「FLOWER」により顕著だ。
リリースに先立って動画サイトにて公開されたMVを観れば一目瞭然だが、ロック特有のワルい色気は彼らの佇まいに意外なほどよく似合う。加えて歌詞がまた未練がましくていい。要約すれば別れた恋人を忘れられない男の歌であり、ともすれば諦めの悪いみっともなさが際立ちかねない内容でありながら、彼らの人間性にも通じる真っ直ぐなまでの情熱がそれをロマンに変える。“君の未来は僕が奪いにいく”、この一行のなんと強いことか。実際には虚勢を張っているだけかもしれないし、別れた女性からすれば迷惑この上ない話かもしれない。けれど、それらもすべてひっくるめて芬々と立ちのぼる人間臭さをアグレッシブなロックチューンへと昇華させ、堂々突きつけてくるTHE BEAT GARDENに「待ってました!」と、いよいよの本領発揮を期待したい。
一方、カップリングはタイプの違うエレクトロナンバーが2曲。ミディアムテンポの柔らかさとスケール感でいつまでも傍にいると愛しい人に誓う「Carried away」、自らの選んだ道を歩いていく決意と覚悟をシリアスかつエモーショナルに歌い上げた「Walk This Way」と実に表情豊かだ。9月には大阪、東京の2都市でデビュー後初となるワンマンライブも決定しているTHE BEAT GARDEN、ますますたくましく成長する彼らから目を離せそうにない。
【文:本間 夕子】
リリース情報
FLOWER
発売日: 2017年07月19日
価格: ¥ 1,806(本体)+税
レーベル: ユニバーサル ミュージック
収録曲
1. FLOWER
2. Carried away
3. Walk This Way
4. FLOWER (Instrumental)
5. Carried away (Instrumental)
6. Walk This Way (Instrumental)