レビュー
マカロニえんぴつ | 2017.07.26
老若男女が歌って踊りたくなるはずの王道のキャッチーさを持ちながらも、さり気なく妖しいスパイスを忍び込ませるのが得意なマカロニえんぴつ。タワーレコード限定でリリースされる今作も、そういう作風の鮮やかな結晶だ。収録されている3曲は夏から初秋にかけての物語を映し出すが、どれも唯一無二の味わいに満ちている。
まず、タイトル曲の “夏恋センセイション”は、ライブの現場でも絶大な効力を発揮すること間違いなしの明るい仕上がりだが、じっくり向き合うと、かなり変わった手法が散りばめられていることに気づかされる。絶妙なポイントで繰り出される転調、キャッチーなメロディを徹底的に届ける構成、ウキウキできる起伏に富んだ展開など、特筆すべき部分がいろいろある中、何と言っても印象的なのが、英語風に発音しているわけでは決してないのに英語のようにも感じられる響きを実現している歌詞のフレーズの数々だ。例えば、何度も繰り返される《真夏 浴衣 君と花火》が、とても気持ちいい。軒先に吊るした風鈴の音でも何処からか聴こえてきそうな日本語の名詞が並んでいるフレーズだというのに、とても洗練されたノリを醸し出しているのがすごい。このような手法が全篇で発揮されている結果、艶めかしく光っている林檎飴、必死に鳴いているセミ、女の子の白いうなじ……日本の夏の象徴のような要素が満載であるにもかかわらず、最高にかっこいいロックチューンとして堂々と響き渡っている。
そして、カップリングの2曲も素敵なので、ぜひじっくり味わってほしい。終わると分かっている恋を、敗戦が濃厚な野球の試合に喩えてホロ苦く描く“ゲームセット”。哀愁に満ちたエレピのオシャレな音色を際立たせながら、行き場のない指先で感じている寂しさをじっくりと浮き彫りにしている“歩き続けて”。どちらもタイトル曲同様に、マカロニえんぴつが一味違うバンドであることを示している。新鮮なロックバンドを探している人は、彼らのことを早速チェックした方がいい。公式ウェブサイトにアクセスすれば、“夏恋センセイション”は勿論、過去の様々な曲のMVも観られるので、まずは手始めにそこからどうぞ。
【文:田中 大】
リリース情報
夏恋センセイション
発売日: 2017年08月02日
価格: ¥ 1,000(本体)+税
レーベル: TALTO
収録曲
01. 夏恋センセイション
02. ゲームセット
03. 歩き続けて