レビュー
10-FEET | 2017.10.31
今年、バンド結成20周年というアニバーサリーイヤーを迎えた10-FEET。その大きな節目に、前フル作『thread』以来、約5年ぶりになる8thアルバム『Fin』を完成させた。控えめに言っても、これは最高傑作だろう。いや、別に控えめに言う必要はないが、間違いなく最高の出来映えだ。ここに来て、バンドが自らのポテンシャルをさらに更新するバイタリティに驚いた。とはいえ、これまでの道のりは決して平坦ではなかった。フル作としては5年という期間が空き、今作に辿り着くまでに3枚のシングルを刻んできたが、その最初にあたる15thシングル「アンテナラスト」が出るまでに実に約4年の月日がかかっている。それから今年に入り、16thシングル「ヒトリセカイ×ヒトリズム」、17thシングル「太陽の月」とドドドと畳み掛け、今作に無事着地した。特にこの3枚のシングルが与えた影響は大きく、表題曲においてはTAKUMA(Vo・Gt)の歌心を基軸にしたスロー・テンポの曲調で攻め、しかもそれらの楽曲がどれも格段にライブ映えするという新たな武器を手に入れた。
振り返れば、デビュー時はHi-STANDARDに多大なインスパイアを受けた、英語詞のメロディック・パンクを鳴らしていた。それからメタル、レゲエ、ヒップホップなど多彩なジャンルを包括したミクスチャー路線に変貌を遂げ、10-FEETらしいオリジナリティを築き上げてきた。そして、今作はどうだろう。もはやデビュー時というより、それ以前の10代の少年のごとき天真爛漫な遊び心と、実績と経験を積み重ねた円熟味のある表現の両方を、見事にアップデートした形で届けている。既発5曲を含む全15曲というボリュームに、今の10-FEETができうる喜怒哀楽のすべてを詰め込んだと言っても過言ではない。 冒頭を飾る「1 size FITS ALL」はバンドの真骨頂を叩き付けるミクスチャー・ロック。そこに方言や大人びたジャジーなフレーズを織り込み、爆発的なテンションで聴く者を圧倒する。そんなやんちゃぶりを発揮しながら、哀切なイントロからグッと来る「ウミガラスとアザラシ」は、3枚のシングル表題曲に比肩する名バラードだ。ほかにも、ただひらすら干支のことを歌ったハードコア調の「十二支」、東京スカパラダイスオーケストラをフィーチャーした「HONE SKA」など、シュールな表現が冴え渡る抱腹絶倒ナンバーもあり。10-FEETというバンドの思想や人柄が、現時点において、これ以上に伝わってくる作品はない。繰り返しになるけれど、そういう意味でも今作は最高傑作だと思う。
【文:荒金 良介】
リリース情報
Fin
発売日: 2017年11月01日
価格: ¥ 2,600(本体)+税
レーベル: EMI records
収録曲
1 size FITS ALL
2.Fin
3.fast edge emotion
4.ウミガラスとアザラシ
5.ヒトリセカイ
6.十二支
7.HONE SKA feat.東京スカパラダイスオーケストラ
8.月 〜sound jammer せやな〜
9.夢の泥舟
10.火とリズム
11.way out way out
12.アンテナラスト
13.STANDin
14.太陽4号
15.何度も咲きました